「もらい事故で全損といわれたけど、買い替え費用は請求できるの?」
「買い替え費用を請求したけど、提示額が買い替え費用に見合わない・・・」
この記事をご覧になっている方は、上記のような悩みを抱えているのではないでしょうか。
結論からいうと、もらい事故で全損したときの買い替え費用は限度はあるものの基本的に相手に請求することが可能です。
実際に、全損したときに請求できる金額は「(車両時価額+買替諸費用)-事故車の売却金額」と決まっているので、慎重に交渉を進めることで費用請求の泣き寝入りを免れることができます。
当記事では、全損事故後の買い替え費用の請求の流れや、費用請求で泣き寝入りをしないための対処法を解説しています。
事故で車が全損して買い替え費用の請求方法が分からない方、補償金を最大限受け取りたい方はぜひお読みください。
事故車買取に携わって20年以上の経験を持ち、損害車や故障車に関する知識が豊富。
幼少期からの車好きが高じて、中古車販売店や大手カー用品店、ガソリンスタンドなどに従事し、
車の知見も深い。その経験を活かし、お得な売却術や修理・乗り換え方法など車に関する幅広いコラムの監修をしている。
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小池 一敏
もらい事故で全損した場合相手に買い替え費用を請求できる
交通事故で車が全損した場合、相手(加害者側)に対して車の買い替えに必要な費用を請求することができます。
とくに、「もらい事故(自分にまったく過失がない事故/過失割合10:0)」であれば、自分の保険を使わずに相手に請求可能です。
まずは車が「全損」と判断される2つのケースをみていきましょう。
経済的全損 | 修理はできるが、修理費用が買い替え費用よりも高額になる状態 |
---|---|
物理的全損 | 損傷の程度が激しく、物理的にも修理不可能である状態
(例:フレームの破損や焼損など) |
経済的全損・物理的全損ともに、正当な損害として相手に買い替え費用を請求できます。
しかし、どちらの全損でも買い替え費用の全額が補償されるわけではなく、請求できる範囲や条件があるので注意が必要です。
また、経済的全損の場合は補償の金額をめぐってトラブルになりやすい傾向があります。
その理由は、被害者側が「修理して乗れそうなのに修理費用をカバーしきれない金額しか補償されない」ような部分で不満が出るためです。
次の章で経済的全損の補償金額について詳しく説明します。
修理費用が車両時価額を上回る場合超えた分は自己負担になる
修理費用が車両時価額を上回るケースは、経済的全損と判断され、「車両時価額+買い替え諸費用」までしか補償されません。
つまり、修理すればまだ乗れる状態だと思っていても、保険会社は修理費用全額を支払ってくれるわけではありません。
例えば、修理費用が80万円、車両時価額が40万円、買い替え諸費用が10万円の場合、保険で補償される最大金額は50万円になります。
仮に修理を選ぶと、差額の30万円は自己負担になってしまうのです。
一方で、損傷の程度が激しく、物理的にも修理不可能である状態を「物理的全損」と呼びます。
この場合は当然ながら修理はできないため、買い替えが前提となります。
いずれのケースでも、「もう少し補償金額を増やしてほしいけど、どうせ決まった金額しか出ない」と考えて泣き寝入りする必要はありません。
車を買い替える際には、本体価格以外にも多くの費用がかかり、それらの諸費用を請求できる可能性があります。
以下の【買い替え諸費用で請求可能な項目一覧】では、どんな費用が補償対象になり得るのかを具体的に解説します。
請求可能な補償項目を確認して、本来受け取れるべき補償を見逃さないようにしましょう。
事故で全損した車の買い替え諸費用で請求可能な項目一覧
事故で全損した車の買い替え時にかかる諸費用で、請求可能な項目を一覧表にまとめています。
保険会社は最低限の補償額を提示する場合があるので、請求可能な対象費用をしっかり把握しましょう。
廃車費用 | 廃車手続きにかかる業者の代行手数料や車両の解体にかかる費用 |
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登録費用 | 車を買い替える際の新規登録、変更登録、抹消登録など、自動車の登録手続きを行う時に必要な手数料 |
登録手続代行費用 | 車の検査・登録などをディーラーや販売店の代行してもらう費用 |
納車費用 | 新しく買った車を、販売店から自宅まで配送してもらう時にかかる費用 |
リサイクル料金 | 将来車が廃車される時の解体作業を前もって払う費用 |
車庫証明費用 | 自動車の保管場所が確保されていること警察に証明してもらう時に必要な手数料 |
車庫証明手続代行費用 | 販売店に車庫証明の申請手続きを代行してもらう際、販売店に支払う手数料 |
消費税相当額 | 車の修理費用や購入費用など課税対象となる支出に対して課される消費税 |
自動車税環境性能割 | 自動車を取得したときに、燃費性能に応じて課税される税金 |
事故車の保管料 | 事故後に車を修理工場や保管業者に預ける際に発生する保管スペース代金や管理費用 |
もしローンの残っている車で事故を起こして、処分方法に困っている方は下記の記事をご覧ください。
ローンの残額を減らす方法も詳しく解説しています。

事故で全損した車の買い替え費用の請求には限度がある
交通事故で車が全損になった場合、新しい車の買い替え費用を請求できますが、「全額」の請求が認められるわけではありません。
特に、保険会社が提示する賠償額は、一定の基準に基づいて算出されるため、希望金額と異なる場合があります。
買い替え費用の請求の限度を知ることは、現実的な交渉を行う上で非常に重要です。
この章では2つのポイントを紹介します。
- 具体的な保険会社の提示する買い替え費用の決まり方
- 保険会社の提示額に納得できない時の交渉のポイント
保険会社が提示する買い替え費用の決まり方
保険会社が提示する買い替え費用は、基本的に「(車両時価額+買替諸費用)-事故車の売却金額」という計算式で算出されます。
「車両時価額」とは、事故に遭う直前の車の価値を指し、法律上加害者が負う賠償責任は「車両時価額」が限度とされています。
時価額は中古車市場での流通価格を基準としているため、提示額が新車時購入時の価格より大幅に下がるケースが多いです。
保険会社はこの中古車市場での価値を査定するために、「レッドブック」という専門資料を使用します。
特に年式が10年以上の車については、車種に関係なく新車価格の約10%が時価額の目安とされるケースが一般的です。
そのため、保険会社から提示された金額に納得できないと感じる方も少なくありません。
保険会社の提示額に納得できない時の交渉ポイント
保険会社から提示された買い替え費用に納得できない場合でも、いくつかの交渉のポイントを押さえることで、提示額を増額できる可能性があります。
提示された金額に対する交渉すべきポイントは下記の通りです。
1.時価額が不当である根拠を提示する
事故に遭う前のあなたの車と同程度の車の市場価格を調査し、具体的な情報(中古車サイトのURL、販売価格、年式、走行距離など)を提示して、保険会社の提示額が不当であることを主張しましょう。
例えば、同車種の類似の中古車が、保険会社の提示額よりも高値で取引されている証拠を集めるなどです。
2.買い替え諸費用の漏れがないか確認する
先ほど説明した【買い替え諸費用で請求可能な項目一覧】を参考に、請求漏れがないか再度確認しましょう。
見落としている諸費用があれば、追加で請求できないか交渉します。
3.弁護士に相談する
自分自身に負担が最もなく安心な交渉手段は、交通事故に詳しい弁護士に相談することです。
弁護士は、過去の判例や専門知識に基づいて、保険会社と交渉することが可能です。
弁護士が介入することで、賠償額が増額するケースは多く、交渉が難航している場合や、相手の保険会社の対応に不信感がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
より詳しく自分自身で交渉をするための手段や用意すべき資料を知りたい方は、下記の記事を参考にしてみてください。

もらい事故で全損した際の買い替え費用請求の流れ
もらい事故で車が全損してしまった時、どのような流れで買い替え費用の請求を進めればいいのか不安に感じている方も多いと思います。
この章では、買い替え費用請求の流れを4つのステップに分けて詳しく解説していきます。
具体的な流れは下記の4つです。
- 弁護士に相談する
- 保険会社に連絡する
- 相手方と交渉する
- 買い替え費用・修理費用を見積もる
請求までの流れを事前に把握することで、不安を減らし円滑に買い替え費用を請求できるでしょう。
弁護士に相談する
買い替え費用を請求する際は、示談交渉の前に弁護士に相談して、交渉の進め方やポイントを把握しておくと安心です。
もし交渉が難航しそうな場合や、相手の保険会社の提示額に納得できない場合は、そのまま弁護士に依頼するのがおすすめです。
自分で交渉することも可能ですが、専門知識がないと不利な条件で話が進んでしまうこともあります。
弁護士であれば、過去の裁判例や法律に基づいて、より高い賠償金を請求できるかどうかをしっかり判断し、代わりに交渉してくれます。
自動車保険の契約内容を確認し「弁護士費用特約」に加入している場合は、弁護士費用を気にせず相談・依頼ができるため安心です。
納得のいく補償を受けるためにも、①まず弁護士に相談 → ②示談交渉の流れを把握 → ③必要に応じて弁護士に依頼というステップで進めるとよいでしょう。
保険会社に連絡する
もらい事故などの過失割合が10対0の事故では、基本的に自分の保険会社は相手との交渉に関わることができません。
しかし、それでもまずはご自身が加入している保険会社に連絡するようにしましょう。
もらい事故のように自分に過失がない場合、「保険会社に連絡しなくてもいいのでは?」と思われがちですが、以下のような保険に加入していれば、補償を受けられる可能性があります。
- 弁護士費用特約
- 車両保険
- 人身傷害保険
まずは保険会社に相談し、適用できる補償があるかどうか確認しておくと安心です。
修理費用・買い替え費用を見積もる
保険会社に連絡をした後は、修理費用や買い替え費用の見積もりを取りましょう。
ディーラーや中古車販売店などに依頼し、事故車の修理にかかる費用や、車の現在の価値を査定してもらうことで、適切な市場価格を把握できます。
保険会社は、最低限の補償額しか提示してこないケースも少なくありません。
そのため、あらかじめ見積もりや査定を取っておくことで、「この金額では足りない」という根拠を示す材料になり、補償額を増やすための交渉がしやすくなります。
相手方と示談交渉する
見積もり金額などの必要な情報がそろったら、相手との示談交渉を始めましょう。
もらい事故など、こちらに過失がない場合は、自分の加入する保険会社が交渉に入ることはできません。
そのため、本人が直接交渉を行うか、弁護士に依頼して進めることになります。
本人が直接交渉を行う際に気を付けたいのは、相手の保険会社が提示してきた条件や金額をそのまま受け入れないことです。
というのも、保険会社は最低限の補償額しか提示してこないケースもあるため、被害者にとっては本来受け取れるはずの金額よりも低くなる可能性があるからです。
提示された内容に納得できない場合は、しっかりと自分の意見や根拠を伝えながら、交渉を続けることが大切です。
もし交渉が難航したときは、事前に相談していた弁護士に依頼し示談交渉を代理してもらいましょう。
専門家の力を借りることで、よりスムーズに、そして適正な賠償額を受け取れる可能性が高まります。
全損事故の費用請求で泣き寝入りしないためのケース別対処法
全損事故に遭った方の中には、不本意ながら泣き寝入りせざるを得ない状況に追い込まれるケースも存在します。
しかし、諦める必要はありません。
ここでは、全損事故の費用請求で泣き寝入りしないための、ケース別の具体的な対処法をご紹介します。
- 加害者が保険に加入していない場合
- 相手の保険会社に言いくるめられそうな場合
加害者が保険に加入していない場合
事故の加害者が保険に加入していない場合、最も困惑するケースの一つが、加害者が保険に加入していない場合です。
このケースでは、保険会社ではなく加害者本人に直接賠償金を請求することになりますが、相手に十分な資力がないことや、支払いを拒否されることなど、賠償金の回収が困難になるリスクがあります。
しかし、決して泣き寝入りする必要はありません。
下記の2つの手段を利用し泣き寝入りを避けましょう。
無保険車傷害保険の利用
まず、自身の保険加入の内容に無保険車傷害保険が含まれているのかを確認しましょう。
そもそも、無保険車傷害保険とは保険に加入していない車との事故で、相手から十分な補償が受けられない場合に、損害額に対して自身の保険会社が補償してくれる制度です。
ただ、無保険車傷害保険には限度額や補償範囲があるので加入している場合は、規約を再度確認しましょう。
政府の保障事業制度を利用
保障事業制度とは、ひき逃げ事故や、加害者が無保険の場合など、自賠責保険から損害賠償を受けられない被害者を救済するための制度です。
加害者に支払い能力がない場合でも、この制度を利用すれば自賠責保険の保障範囲内で補償を受けられます。
相手の保険会社に言いくるめられそうな場合
加害者側の保険会社は、交渉のプロであり、不利な条件で言いくるめようとしてくる可能性もあります。
例えば、「提示額が相場だ」「これ以上の増額はできない」などと言って、自身が納得できないまま示談を急がせるようなケースです。
このような相手の保険会社に言いくるめられそうな場合の対処法を3つ紹介します。
1.疑問点を質問する
まず最初にすべきことは、提示された賠償額や条件について質問をすることです。
この時、納得できるまで詳しく説明を求め、自身が納得できるような内容であるかを判断します。
2.提示額が適切か情報収集する
疑問点を質問したが、「賠償額が適切ではない」と感じた場合、提示された時価額が適切であるかどうかを調べましょう。
【修理費用・買い替え費用を見積もる】で説明したように、ディーラーや中古車販売店・中古車情報サイトなどで時価額の情報を集めることで、客観的なデータで賠償額が適正かどうかを判断することができます。
3.弁護士に相談する
最も確実な方法は弁護士に相談することです。
弁護士は、保険会社の提示額が適切かどうかを判断し、自身の代わりに交渉を進めてくれます。
自動車保険に付属している弁護士費用特約への加入があれば、費用負担を気にせずに依頼できるため、ぜひ活用をし、泣き寝入りを避けましょう。
弁護士費用特約に加入していない場合にかかる弁護士費用を表にまとめたので、参考にしてみてください。
相談料 | 無料~30分5,500円 |
---|---|
着手金 | 10万円~20万円 |
成功報酬 | 経済的利益(増額できた金額)の16% |
実費 | 約5万円(交通費、切手代、通信費、補償金などの実費分) |
事故車全損時の買い替え費用に関するよくある質問
この章では、事故車全損時の買い替え費用に関するよくある質問とその回答をまとめています。
下記の疑問を持たれている方は是非参考にしてみてください。
- 時価額に納得できない場合裁判で金額は変わるの?
- 全損事故による精神的苦痛に対しては慰謝料を請求できない?
時価額に納得できない場合、裁判で金額が変わることはありますか?
裁判によって賠償額が増額される可能性はあります。
しかし裁判まで持ち込まず、弁護士を通じて相手の保険会社と交渉することで増額につながった判例が数多くあります。
これは、弁護士が裁判になった場合の判例や見込み額を示すことで、裁判に発展する前の段階でも保険会社に増額を促すことができるためです。
一方で、裁判には時間や費用がかかるというデメリットもあります。
そのため、裁判を検討している場合でも、まずは弁護士に相談し、裁判を起こすべきかどうか、勝てる見込みがあるか、費用に見合うかなどを総合的に判断することが重要です。
全損事故による精神的苦痛には慰謝料を請求できる?
事故の種類 | 慰謝料請求の可否 | 補足内容 |
物損事故 | 不可 | 車・物の損害は慰謝料対象外
※同乗者・ペットが被害にあった場合は請求可能 |
人身事故 | 可能 | 入院慰謝料・後遺障害慰謝料が請求可能 |
車が全損するような事故でも、けが人がいない場合は「物損事故」として扱われます。
物損事故では、たとえ精神的なショックやストレスを受けたとしても、原則として慰謝料を請求することはできません。
ただし、ペットは法律上、物(財産)として扱われるため、交通事故で負傷または死亡した場合、その損害は物損事故として扱われるため慰謝料を請求することができます。
また、近年では裁判などで「ペットは家族同然の大切な存在である」と(物損事故に関係なく)慰謝料の請求を認めるケースも増えてきています。
そのため、事故でペットが亡くなった場合に限り、精神的苦痛に対する慰謝料が認められる可能性があります。
まとめ
事故によって全損した車の買い替え費用は、加害者側に請求することが可能です。
ただし、買い替え費用が全額補償されるわけではなく、「事故直前の車の時価額」が基準となるため、新車の購入費用すべてが戻ってくることは期待できません。
また、相手の保険会社が最低限の補償額しか提示してこない可能性もあるため、提示された金額をすぐに鵜呑みにするのは危険です。
「買い替え費用をもっと請求したいけど、自信がない・・・」
「主張はあるけど、うまく言いくるめられそう・・・」
上記のような不安がある場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
また、全損した事故車の処分に困っている方は事故車買取のタウにお任せください。
当サイト事故車買取のタウでは事故車を専門に取り扱っています。
累計買取実績は業界最多を記録しており、長年の経験と豊富な知識を併せ持ち海外にも独自の販路を築き上げているため、どんな状態のお車でも可能な限り高価買取を実現させていただきます。
事故車の損傷が大きいからという理由で売却を諦めるのではなく、まずお気軽にお問合せ・ご相談ください。
事故車買取に携わって20年以上の経験を持ち、損害車や故障車に関する知識が豊富。
幼少期からの車好きが高じて、中古車販売店や大手カー用品店、ガソリンスタンドなどに従事し、
車の知見も深い。その経験を活かし、お得な売却術や修理・乗り換え方法など車に関する幅広いコラムの監修をしている。
小池 一敏