車の売却時に所有権解除が必要といわれた場合、
「所有権解除って何?」
「どうやってやるの?」
と疑問に思いますよね。
所有権解除は、ローンで購入した車を売却や譲渡したい人が必ず取るべき手続きのことです。
本記事では、所有権解除を進めるために必要な知識を分かりやすく解説します。
- 所有権解除とは何か
- 所有権解除に必要な書類一覧
- 所有権解除手続きの流れ
- 所有権解除を怠った場合のリスクと罰則
売却や廃車手続きをスムーズに進めるために、是非ご参考にしてください。

事故車買取に携わって20年以上の経験を持ち、損害車や故障車に関する知識が豊富。 幼少期からの車好きが高じて、中古車販売店や大手カー用品店、ガソリンスタンドなどに従事し、 車の知見も深い。その経験を活かし、お得な売却術や修理・乗り換え方法など車に関する幅広いコラムの監修をしている。 ...続きを読む
所有権解除とは?
所有権解除とは、自動車ローンを完済したあとに、車検証上の所有者名義をローン会社やディーラーから自分自身へ変更する手続きのことです。
車検証には「所有者」と「使用者」の欄があり、所有者は法律上の持ち主、使用者は日常的にその車を使う人を指します。
ローンを組んで車を購入した場合、所有者はローン会社や販売店、使用者は購入者本人になるのが一般的です。
これは、返済が滞ったときに車を差し押さえられるようにする「所有権留保」という仕組みがあるためです。
車の所有者として車検証に記載されていなければ、住所変更や売却など車に関するすべての手続きは勝手に進められません。
そのため、この後解説する所有権解除に必要な書類や流れを抑えて手続きの準備をしましょう。
なお、契約内容によっては、最初から所有者欄に自分の名前が記載されているケースもあり、その場合は所有権解除は不要です。
所有権を自分名義に変更する際に必要な書類
車の所有権をローン会社やディーラーから自分(使用者)に変更するためには、「所有権解除の申請書類」と「所有権解除後の名義変更手続き申請書類」の2段階で用意する必要があります。
両方の手続きで共通して必要になる書類もあるため、最初から必要部数をそろえておくと手続きがスムーズに進みます。
書類名 | 所有権解除 | 名義変更 | 取得方法 | 書類の注意点 |
車検証 | 〇 | 〇 | 車検証(原本)または国交省アプリで印刷 | 必ず原本を提出 |
---|---|---|---|---|
使用者の印鑑証明書 | 〇 | 〇 | 市区町村役所の窓口またはコンビニで発行 | 2部必要(発行から3ヵ月以内) |
所有権解除依頼書 | 〇 | ✖ | ローン会社やディーラーの公式サイトから印刷 | 使用者の実印を押印 |
完済証明書・契約終了通知 | 〇 | ✖ | ローン会社やディーラーに依頼 | 会社ごとで名称が異なる |
譲渡証明書 | ✖ | 〇 | ローン会社やディーラーが発行 | 旧所有者の実印が必要で、再発行不可 |
委任状 | ✖ | 〇 | ローン会社やディーラーまたは使用者 | 代行依頼時は使用者が作成 |
旧所有者の印鑑証明 | ✖ | 〇 | ローン会社やディーラーが発行 | 発行から3ヵ月以内 |
納税証明書 | ✖ | 〇 | 自動車税事務所や市区町村役所で発行 | 車検時取得済みの場合は不要の可能性あり |
なお、ここで紹介しているのは普通自動車の所有権解除を行う場合に必要となる書類一覧です。
軽自動車の所有権解除を行う場合や行政書士・ディーラーに所有権解除の代行を依頼する場合は、必要書類や流れが一部異なります。
自分がどのケースに当てはまるのかを確認したうえで準備を進めましょう。
また、2023年から導入された電子車検証には所有者名が記載されていないため、手続きには追加で「自動車検査証記録事項」が必要です。(参考:国土交通省)
この書類の取得方法は次の2つです。
- 国土交通省の公式アプリで車検証のICチップを読み取り該当ページを印刷
- 運輸支局や軽自動車検査協会の窓口もしくは端末で発行
どちらの方法でも有効ですが、事前に自宅で準備できる点から、アプリを使った印刷がもっとも便利です。
住所変更や売却など所有者の同意が必要になる各種手続きの申請時に、書類の不備によって所有権解除が滞ると、本来の目的である手続きにも影響が出る恐れがあります。
そのため、必要な書類を正しく把握し、漏れなく準備することが大切です。
次の項目では、実際にどのように書類を準備するのかをステップごとに解説します。
所有権解除の手続き方法|4ステップで完了
車の所有権解除は大きく分けて以下の4つの流れになります。
- ローンの完済を確認
- ローン会社やディーラーに所有権解除を依頼
- 所有権解除に必要な書類を準備
- 陸運局や軽自動車検査協会で名義変更手続き
各ステップで必要な証明書や依頼書が異なるため、順番に手続きを進めることが大切です。
特に売却や廃車の予定がある場合は、所有権解除に必要な書類の発行にかかる日数や費用を事前に把握しておくと、手続きをスムーズに進められます。
では、最初のステップである「ローン完済の確認方法」について詳しく見ていきましょう。
ステップ1:ローン完済を確認
所有権解除申請を行うには、ローンの支払いがすべて終わっているか確認する必要があります。
残債が残っている状態では所有権を移せないため、申請そのものが受理されません。
残債の確認方法は、契約しているローン会社やディーラーに電話やFAXで問い合わせるのが一般的です。
即日回答がもらえる場合もありますが、多くは翌営業日以降となります。
完済が確認できると、完済証明書や契約終了通知書が発行されます。
完済証明書の発行には2〜5営業日かかるため、売却や車検を控えている方は余裕を持って依頼しておくと安心です。
なお、2025年7月以降は軽自動車に限り、この証明書が不要となりました。
普通自動車と軽自動車では残債照会後の手続きが異なりますので、「ステップ2:ローン会社やディーラーに所有権解除を依頼」をしっかり確認しましょう。
また、未完済の状態で所有権解除を依頼する場合は、一括返済や繰り上げ返済を行い、完済したうえで証明書を取得する必要があります。
詳しくはローン残りのある車の売却方法について解説した下記の記事をご確認ください。

金融機関によって手数料や返済方法が異なるため、事前に確認しましょう。
なお、当社タウでも査定額が残債を上回れば、未完済のお車でも売却できる可能性がございます。
ご売却先でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
ステップ2:ローン会社やディーラーに所有権解除を依頼
ローン完済が確認できたら、次はローン会社やディーラーに所有権解除を正式に依頼します。
これは「車の持ち主をローン会社から自分に移してください」と申請する段階です。
ただし、前述したように普通自動車と軽自動車で手続きの流れが異なりますので、以下をご確認ください。
軽自動車は2025年7月以降の法改正により、従来必要だった所有者承諾書が不要となり、軽自動車検査協会での処理に直接進めるようになりました。(ステップ4に続く)
一方、普通自動車は所有権解除書類を受け取るために、必要な書類(所有権を自名義に変更する際に必要な書類参照)を揃えてローン会社やディーラーに提出し、審査を受けます。
提出書類の内容に問題がなければ、名義変更に必要な以下の書類が、5~7営業日以内に郵送にて発送されます。
- 譲渡証明書
- 委任状
- 旧所有者の印鑑証明書
紛失した場合は、譲渡証明書発行済証を代わりに交付してもらうことが可能ですが、無くさないように提出書類はまとめて保管するようにしましょう。
ただし、ローン会社やディーラーから届いた書類だけでは名義変更の手続きは完了できません。
自分で役所や運輸支局で取得すべき追加の書類もあります。
具体的にどのような書類を準備する必要があるのかについては、次のステップ3「所有権解除に必要な書類を準備」で解説します。
ステップ3:所有権解除に必要な書類を準備
ローン会社やディーラーから所有権解除の許可がおりたら、陸運支局などで名義変更を行うために必要な以下の書類を揃えましょう。
- 車検証の原本
- 使用者本人の印鑑証明書
- 納税証明書
なお、印鑑証明書と車検証の住所や名字が一致しない場合は、住民票や戸籍謄本を追加で提出して「過去から現在までの変更のつながり」を証明する必要があります。
例えば、引越で住所が変わった時は住民票を提出し、旧姓から結婚後の姓に変わった場合は、戸籍謄本を提出します。
なお、複数回転居している場合住民票では確認が取れないので、戸籍の附票を提出する必要があります。


また、電子車検証を利用している場合は「自動車検査証記録事項」の印刷が必須です。
アプリや端末での出力を忘れると受付で差し戻されるため、他の書類と一緒に早めに準備しておくのが安全です。
これで名義変更に必要な書類がすべて揃います。
次のステップ4では、実際に運輸支局や軽自動車検査協会で提出する流れについて解説していきます。
ステップ4:所有権解除に伴う名義変更手続き書類を提出
すべての書類を揃えたら、管轄の運輸支局(普通車)または軽自動車検査協会(軽自動車)の窓口で名義変更の申請を行います。
運輸支局や軽自動車検査協会での手続きの流れは以下のとおりです。
- 必要書類を窓口に提出する
- 登録印紙(約500円)を購入して申請書に貼付する
- 窓口で審査・受付を受ける
- 新しい車検証を受け取る
窓口受付は平日の午前中〜午後4時頃までが一般的です。
登録印紙は運輸支局や軽自動車検査協会の窓口、または隣接の売店で500円程度で購入できます。(参考:国土交通省|自動車登録手続の手数料)
名義変更申請書類の提出にあたっては、下記の3点に注意しましょう。
- 書類はすべて原本を提出する
- 印鑑証明書の有効期限を確認する(発行から3か月以内)
- 譲渡証明書は法律上再発行できないためコピーの控えを取る
もし提出書類に不備があれば、その場で差し戻されてしまうので、提出前に記載内容は確認するようにしましょう。
手続きそのものは即日で完了しますが、窓口の混雑状況によっては1〜2時間かかることもあります。
早めに来庁し、余裕を持って対応するのが安心です。
これで売却や廃車といった次のステップへ進める状態が整います。
ここまでで、所有権解除から名義変更手続きの流れを簡単に解説いたしましたが、より詳しく名義変更手続きについて知りたい場合は、下記の記事を併せてご確認ください。

次の章では、所有権解除後に名義変更を行わなかった場合に起こり得る罰則について解説します。
名義変更を怠った場合のリスク(15日ルール)
道路運送車両法第12条と13条では、名義変更(移転登録)や住所・氏名変更(変更登録)があった場合、その変更が発生した日から15日以内に登録内容更新の手続きを申請するよう義務付けられています。
結婚や引越し、売却による名義変更などが典型的なケースです。
もし15日以内に所有権解除に伴う名義変更を行わなければ、道路運送車両法第109条に基づき、50万円以下の罰金が科される可能性があります。
実際には、期限超過でただちに処罰されることは少ないものの、法律上は明確な違反行為です。
また、罰金だけでなく、以下のような日常的な不便も生じる可能性があります。
- 自動車税の納付書が届かず未払い扱いになる
- リコール通知や違反点数通知書など重要な情報が前の住所へ送付される
- 自賠責保険の更新案内が届かず、保険が失効してしまう恐れがある
こうした事態に備えるためにも、ローン完済後できるだけ早く所有権解除を済ませ、15日以内の名義変更を確実に実行することが大切です。
ここまで、所有権解除を怠った場合に起こり得るトラブルをご紹介しました。
続いては、実際に所有権解除手続きを検討している方がよく疑問に思うことについて解説します。
所有権解除に関するよくある質問(Q&A)
所有権解除は普段あまり意識することのない手続きなので、初めて取り組む人にとっては疑問や不安が尽きません。
ここでは、所有権解除に関して特によく質問される内容をQ&A形式で整理しました。
実際に手続きを進める際に迷わないように、事前にしっかり理解しておきましょう。
Q: 所有権解除と名義変更は何が違う?
A: 所有権解除は、ローンで車を購入した人がローン完済後に、車の名義をローン会社から自分に変更するために必要となる手続きのことです。車検証の所有者欄が自分以外になっている人が対象です。
一方で名義変更は、車を他人に売却・譲渡する際に、新しい所有者へ名義を移す手続きのことです。
Q: 完済証明書を紛失したらどうする?
A: 完済証明書はローン会社に依頼すれば再発行してもらえます。
ただし、所有権解除の後に発行される譲渡証明書は再発行ができないため、紛失すると手続きが大幅に遅れる恐れがあります。
到着した書類は、名義変更が終わるまで必ず厳重に保管してください。
Q: 所有権解除は代行可能?
A: 行政書士やディーラー、買取業者で代行を依頼できます。
相場は6,000~15,000円程度で、依頼内容によってはナンバープレート変更や車庫証明取得まで含まれる場合もあります。
自分で行う場合は費用を抑えられますが、平日の日中に運輸支局へ出向く必要があるため、仕事が忙しい人や確実に手続きを済ませたい人は代行を利用するのがおすすめです。
まとめ
所有権解除は、車を売却・廃車・譲渡するために欠かせない重要な手続きです。
必要書類を正しく準備し、期限を守って進めることで、余計なトラブルを防ぎ安心して次のステップに移れます。
この記事で解説した要点を振り返ってみましょう。
- 所有権解除はローン完済後に行う必須手続き
- 必要書類はローン会社が発行するものと使用者が準備するものに分かれる
- 15日以内に手続きを完了させなければ、罰則や余計な手間が生じるリスクがある
もし、売却や廃車を検討されている場合は、所有権解除を早めに済ませることで、手続きがスムーズに進められます。
なお、事故車や故障車など高額な修理費用がかかるためにローン中の車の売却をお考えの方は、事故車買取のタウにご相談ください。
査定額が残債を上回る場合、未完済のお車でも買取ができる可能性がございます。

事故車買取に携わって20年以上の経験を持ち、損害車や故障車に関する知識が豊富。 幼少期からの車好きが高じて、中古車販売店や大手カー用品店、ガソリンスタンドなどに従事し、 車の知見も深い。その経験を活かし、お得な売却術や修理・乗り換え方法など車に関する幅広いコラムの監修をしている。