中古車を購入したあとで、「実は修復歴車だった」と知り、不安になっていませんか?
修復歴車とは、車の骨格(フレーム)部分を損傷または修理・交換した履歴がある車のことをいいます。
見た目はきれいに修理されていても、修復歴車は安全性の低下や故障のリスクが隠れていることがあります。
安心して中古車を選ぶためには、修復歴車のリスクや、どこが損傷していれば修復歴になるのかを理解しておかなければいけません。
本記事では、専門家の基準に基づいて「修復歴」の全体像を整理し、購入時・売却時に後悔しない判断基準をわかりやすく解説します。
修復歴車の購入によるトラブルを避けるために以下のようなポイントを抑えておきましょう。
- 修復歴車の定義
- 事故状況別に「修復歴あり」と判断される部位
- 購入前にチェックすべき安全性と修理品質の見極め方
- 誤って購入した場合の法的対応と売却のコツ

事故車買取に携わって20年以上の経験を持ち、損害車や故障車に関する知識が豊富。 幼少期からの車好きが高じて、中古車販売店や大手カー用品店、ガソリンスタンドなどに従事し、 車の知見も深い。その経験を活かし、お得な売却術や修理・乗り換え方法など車に関する幅広いコラムの監修をしている。 ...続きを読む
そもそも修復歴車とは?
中古車市場で使われる「修復歴車」とは、事故や自然災害によって車の骨格部位(構造部分)を損傷し、「修復歴あり」と判断された車のことを指します。
似た言葉として「事故歴」「修理歴」「交換歴」がありますが、それぞれ意味と扱いが異なります。
- 事故歴:事故や災害に遭った経歴(※告知義務なし)
- 修理歴:車の骨格以外を修理した経歴(※告知義務なし)
- 交換歴:部品交換を行った経歴(※告知義務なし)
- 修復歴:車の骨格部位を損傷・修理した経歴(※告知義務あり)
車の骨格部位とは、車体を支える重要な構造部分のことで、一度損傷すると衝突時の安全性能や走行安定性が低下します。
そのため、中古車市場では修復歴の有無が重要視されます。
骨格部位に該当するのは、具体的に以下のようなパーツです。
![]() |
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名称 | 役割 |
---|---|
①ダッシュパネル | エンジンルームと室内を仕切り、エアバッグなどの安全装備を支える |
②フロントクロスメンバー | エンジンやサスペンションを支え、前部全体の剛性を保持する |
③フロントインサイドパネル | 車両前方の強度を内側から支える |
④フロントサイドメンバー | 車両の主要なフレームで全体の強度を支える |
⑤ルーフパネル | 天井部分を構成し、全体の剛性を補強する |
⑥ピラー | ルーフ(天井部分)とボディを支え、衝突時の安全性能を保つ |
⑦トランクフロアパネル | 車室の床部分を形成し、ボディ全体の安定性を支える |
⑧ルームフロアパネル | トランク床面を形成し、後部構造の強度を維持する |
⑨ラジエーターコアサポート | ラジエーターを固定し、エンジン冷却を支える |
この基準は、自動車公正取引協議会、日本自動車査定協会、日本中古車販売協会連合会によって決められています。
一方で、ドアやバンパー、ボンネットなど外装部品の交換は、車両の安全性への影響が少ないため、修復歴とはみなされません。
また、修復歴の判断はボディーの形状や構造によって異なる場合があります。
修復歴車の定義に関しては、下記の記事でも解説しておりますので合わせてご確認ください。

続いては、車の骨格部位はどのような事故に遭うと損傷するのかを解説いたします。
事故状況から修復歴の有無を判断
車がどのような事故に遭ったかによって、「修復歴あり」と判断される部位や範囲は大きく異なります。
ここでは事故のパターン別の損傷部位について、修復歴が付くケースと付かないケースを見分ける基本知識を解説します。
修復歴車かどうかを判断するときの知識としてご参考にしてください。
正面衝突で修復歴がつくケース
交差点や曲道などで正面衝突を起こした場合、外装だけでなく車体内部の骨格まで損傷が及んでいるかどうかで、「修復歴車」に該当するかが判断されます。
以下の表は、JAAI(日本自動車査定協会)の基準に基づき、正面衝突時に修復歴がつく部位・つかない部位をまとめたものです。
修復歴がつく場合 | ![]() |
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①ダッシュパネルの修復
②フロントクロスメンバーの修復 ③フロントインサイドパネルの修復 ④フロントサイドメンバーの修復 ⑨ラジエーターコアサポートの交換 |
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修復歴がつかない場合 | バンパー、フェンダー、ボンネットなど外部パーツの交換や修理
フロントガラスの交換 エンジンの載せ替え |
車のフロント周辺は、「主要部品を支える構造」と「衝撃を吸収して乗員を守る構造」という2つの重要な役割を持つ5つの骨格で構成されています。
まず主要部品を支える骨格として重要なのが、上記表の②フロントクロスメンバー、③フロントインサイドパネル、⑨ラジエーターコアサポートです。
これらは走行中の振動を受け止めながら、エンジンや冷却装置を固定する基盤のような部位です。
②、③、⑨の部品が損傷すると走行の振動で部品の位置がずれてしまい、異音の発生や故障の原因になります。
基本的には、隣接するサイドメンバーやクロスメンバーなどに「歪み」「曲がり」「溶接跡」などが確認された場合に、修復歴ありと判断されます。
また、①ダッシュパネルや④フロントサイドメンバーは、衝撃を吸収して乗員を守るために設計された部位です。
そのため、正面衝突ではフロントバンパーやボンネットなど外装部品が大きく損傷しますが、これらの部品交換のみでは修復歴はつきません。
一方、ダッシュパネルやフロントサイドメンバーなど車の骨格にまで衝撃が及び、歪みや凹みが生じた場合は、修復歴車として扱われます。
骨格部位を修理または交換した車は、車体全体の耐久性が低下し、再度の衝突時に安全性能を十分に発揮できないリスクがあります。
そのため、査定時には安全性の観点からも慎重に評価されます。
横からの衝突で修復歴がつくケース
車の側面を事故で損傷した場合、ドアやフェンダーだけでなく、車体の形状や骨格に影響が及んでいるかどうかで「修復歴車」と判断されます。
JAAI(日本自動車査定協会)の基準では、側面衝突時の修復歴判定は以下の通りです。
修復歴がつく場合 | ![]() |
---|---|
⑥ピラーの修復
⑧フロア部分の修復 |
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修復歴がつかない場合 | ドアの交換
サイドミラーの交換・修理 サイドガラスの交換 |
側面からの衝突では、車の中心構造に近い⑥ピラーと⑧フロア部分が損傷を受けた場合に、修復歴ありと判断されます。
よく勘違いされやすいのですが、ドアやサイドミラーなどの外装部品は交換や修理をしても修復歴には該当しません。
⑥ピラーは、ルーフ(天井部分)とフロアをつなぐ「柱」の役割を担う部位で、車全体の強度を保つ中核部分です。
ピラーが損傷するとボディの耐久性が大きく低下し、ドアの閉まりが悪くなる、天井がわずかに傾くといった症状が出ることがあります。
また、ピラーは一度変形すると完全に元の形状へ戻すことが非常に難しく、修正跡が残りやすい部位でもあります。
⑧フロアは車両全体を支える「床骨格」にあたる部位で、前輪と後輪の位置関係や直進安定性に深く関わります。
フロアが損傷すると車の骨格が歪み、左右のホイールベース(前後輪間の距離)がずれてしまうことがあります。
その結果、走行中にハンドルが取られる、まっすぐ走らないといった不具合につながり、走行性能に大きな影響を与えます。
以上のことから、車の走行性や耐久性が損なわれる⑥ピラーや⑧フロアの損傷は、事故車の中でも特にリスクが高いといえます。
後ろからの追突で修復歴がつくケース
停車中や渋滞時などに後方から追突された場合、車体の変形がトランクスペースや天井部分に及んでいるかどうかで「修復歴車」に該当するかが判断されます。
JAAI(日本自動車査定協会)の基準では、後方衝突による修復歴の有無は次のように設定されています。
修復歴がつく場合 | ![]() |
---|---|
⑤ルーフ(天井)の修復
⑦トランクフロアの交換・修復 |
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修復歴がつかない場合 | バンパーの交換・修理
リアゲートの交換・修理 リアガラスの交換 |
後方衝突では、⑤ルーフ(天井)や⑦トランクフロア(収納スペースの床部分)にまで衝撃が伝わり、変形や歪みが生じると「修復歴あり」と判断されます。
とくに⑦トランクフロアは複雑な形状をしており、板金修理を行った場合はトランクの蓋がぴったり閉まらない、隙間が生じるなどの症状が見られることがあります。
一方で、リアバンパーやリアゲート、リアガラスなど外装パーツのみの損傷・交換であれば修復歴はつきません。
また、後方からの衝撃で車体全体が歪むと、天井にわずかな波打ちやしわが発生する場合があります。
このように車体の上部にまで変形が及んでいると、ボディ剛性が低下して安全性に影響を与えるため、修復歴車として扱われます。
さらに、追突の衝撃でドライバーが急ハンドルや急ブレーキをかけた場合、足回り部品にもダメージが生じる可能性があります。
これらは修復歴の判定対象にはなりませんが、走行性能や直進安定性に悪影響を及ぼすリスクがあり、放置すると事故再発につながる恐れがあります。
修復歴車を購入する場合の判断方法を紹介
車の骨格部分(フレーム)に損傷・修理の履歴がある修復歴車は、見た目がきれいに直っていても内部構造に歪みが残っていることがあります。
そのため、購入を検討するときは、次のようなリスクを十分に理解しておく必要があります。
- 衝突時の安全性能が低下する
- 走行性能(直進安定性・ハンドリング)が悪化する
- 自動ブレーキなど各種センサーが誤作動を起こす
- ドアやトランクの閉まりが悪くなる
- メンテナンスコストが増加する
車は金属部品の集合体であり、板金や溶接で見た目を元に戻すことはできますが、構造的な剛性や精密なセンサー位置までは完全には再現できません。
また、修理コストを抑えるために非純正部品を使用したり、内部構造の歪みを十分に直さないまま販売されている車も存在します。
こうした車は、見た目には問題がなくても、長期的に不具合やトラブルが発生するリスクが高くなります。
ただし、すべての修復歴車が危険というわけではなく、修復の内容・部位・修理品質によってリスクの度合いは大きく変わります。
次の章では、「購入を控えたほうがよい修復歴車」と「購入してもリスクが少ない修復歴車」の特徴を具体的に解説します。
自分の利用目的や予算に合った選択ができるよう、正しい判断基準を身につけましょう。
購入を控えたほうがよい修復歴車
修復歴車の中には、見た目がきれいに直っていても、構造的な損傷によって安全性や耐久性が大きく低下しているものがあります。
特に以下のような特徴を持つ車は、購入を控えたほうがよいとされています。
- 前方を損傷した車
- エアバッグが展開されたことがある車
- ピラーが変形した車
- 整備記録が不明確な車
車の前方には、エンジンやサスペンションなど車を動かすうえで重要な部品を支える骨格構造があります。
これらの骨格が変形した車は、部品の取り付け位置に微妙なズレが生じ、走行中の振動によって徐々に劣化が進行するおそれがあります。
その結果、エンジンのオーバーヒートや異音の発生などのトラブルにつながる危険性があります。
また、前方損傷を受けた車ではエアバッグの展開歴にも注意が必要です。
エアバッグは安全装備の中核であり、正しく整備・交換されていないと、再度の事故時に作動しない恐れがあります。
修理や交換履歴が不明確な車は避けるのが無難です。
さらに車体全体の強度を支えるピラーが変形している車も要注意です。
ピラーは天井部分と床部分をつなぐ重要な構造部位であり、変形すると元の形状に戻すことがほぼ不可能といわれています。
そのため再度衝突を受けたときに本来の機能通りに衝撃を吸収できず、乗員の安全を確保できないリスクがあります。
以上のことから、修復歴がある車は外部と内部両方の損傷に対する修理が適切に行われているかを整備記録簿(メンテナンスノート)で確認する必要があります。
記録が不明確な車や、販売店が修理履歴の提示を拒む車は、見えない不具合や将来的なトラブルのリスクが高いため、購入は控えましょう。
事故車や修復歴車のデメリットをさらに詳しく知りたい方は、関連記事もあわせてご覧ください。

購入してもリスクが少ない修復歴車
修復歴車の中にも、安全性や走行性能に大きな問題がないものがあります。
その代表例が「雹(ひょう)」により天井を損傷した車です。
車の天井部分は骨格に該当するため、雹でできたへこみや傷は「修復歴」と判断されます。
ただし、交通事故による骨格変形とは異なり、走行性能や安全性能に影響を与えるリスクはほとんどありません。
そのため、適切に補修・再塗装が行われていれば、比較的安心して購入できる修復歴車といえます。
なお塗装が剥がれた状態の車は、金属内部に錆や腐食が発生している可能性があるため注意が必要です。
購入時には、再塗装の有無や補修の状態を販売店に確認しましょう。
また車を正面と後方から見たときに、左右どちらかに傾いておらず、ドアやパーツ同士の隙間が左右対象である車も比較的リスクが少ないと言えるでしょう。
見た目が自然であれば、フレームに歪みがない可能性が高く、構造的なリスクは小さいと判断できます。
以上のことから、修復歴車の購入で失敗しないためには、「どこを、どのように修理したのか」を販売店に開示してもらい、実車を自分の目で確認することが重要です。
特に、骨格修理の有無や再塗装箇所、整備記録簿の内容をチェックすることで、安全性と費用のバランスを見極められます。
誤って購入した修復歴車を売却する方法
中古車を購入したあとで「実は修復歴車だった」と判明した場合、まずは販売店側の説明義務を確認し、必要に応じて法的な救済を検討しましょう。
修復歴車は通常の中古車より査定額が下がりやすいものの、業者選びを適切に行えば損失を最小限に抑えられる可能性があります。
この章では、修復歴車と知らずに購入した場合の対処法と復歴車をなるべく高く売却する方法を紹介します。
修復歴を告げられずに購入したときの対応
中古車販売では売買時に購入者に対して、修復歴の有無を「告知する義務」があります。
これは自動車公正取引協議会や日本自動車査定協会などの基準に基づくもので、骨格(フレーム)部分に修理や交換歴がある車は「修復歴車」として明示しなければなりません。
販売店から説明がなかった場合、民法の「契約不適合責任(民法562条)」が適用され、以下の措置を取れる場合があります。
対応策 | 内容 |
契約解除 | 修復歴を知らされずに購入した場合、売買契約を解除できる場合がある |
---|---|
代金減額請求 | 修復歴による車両価値の減少分を販売店に請求できる |
損害賠償請求 | 故意・重過失がある場合、修理費や再購入費用の一部を請求できる |
購入後に修復歴が判明したら、まず販売店に状況を伝えましょう。
報告のときには、整備記録簿、修理見積書、第三者機関の査定結果などを揃えて提出します。
その後は、自動車公正取引協議会や消費生活センターへの相談、もしくは弁護士への依頼を検討します。
法的救済が難しい場合は、修復歴車でも買取額を上げるために次のような準備を行います。
修復歴車でも査定額を引き上げるコツ
修復歴車を高く売るためには、「どの部分をどのように修理したのか」を正確に伝えられるようにしておきましょう。
査定士が車の状態を正確に把握できれば、その分減額を最小限に抑えることができます。
整備記録簿など修復箇所や部品の交換履歴が分かる資料を用意しておきましょう。
また、修復歴車は買取業者ごとで価値が変わり、数十万円の差が生まれるケースがあります。
特に、海外販売ルートを持つ会社に依頼することで、国内査定より高値で取引されることもあります。
修復歴車を高く売るためのコツは以下のとおりです。
- 事故車・修復歴車専門の買取業者に依頼する
→通常の中古車販売店では修理コストを懸念して買取額が下がる傾向にあるが、専門業者は修復歴車の再販ルートを豊富に持っており高く買い取られやすい - 複数査定(相見積もり)を取る
→ 3〜5社に同条件で査定依頼を出し、最高額を基準に交渉する - 修理品質を証拠で見せる
→整備記録簿やディーラー修理証明書、純正部品の使用履歴などを提示し、しっかり修理された車であることを証明できれば、減額幅を抑えられる - 売却のタイミングにも注意する
→1〜3月(新生活シーズン)や9〜10月(転勤・買い替え期)は中古車の需要が高まりやすく買取価格も上がる傾向がある
とくに修復歴車は買取を断られたり、相場よりも極端に低い買取額を提示されたりする場合があります。
そのため、複数の買取業者に見積もりを依頼することをおすすめします。
事故車の相見積もりに関しては、下記の記事をご確認ください。

また査定時は、査定士や買取業者に車の状態を隠さず正確に伝えることが査定額をあげる上で大切です。
まとめ
修復歴車だからといって、必ずしも購入を避けなければならないわけではありません。
しかし、構造部分(骨格)を修理している車は安全性能が低下している可能性があるため、慎重な判断が必要です。
特に「どの部位を修理したのか」「修理品質に問題がないか」を確認することで、トラブルを防げます。
修復歴車の購入を検討されている場合は、以下の点に注意して安全性能に問題がないかをきちんと確認しましょう。
- 信頼できる業者から購入する
- 第三者機関による車両診断を受ける
- 修復歴がある車の場合、何が修理されたのかを明確に確認する
また、修復歴車は売買時に告知義務があるため、気づかずに購入してしまった場合は、契約解除や代金減額など法的な救済措置を取ることができるか確認しましょう。
もし購入した車でトラブルが発生してしまい買取先にお困りの場合は、「事故車買取のタウ」にお任せください。
タウは世界120カ国以上に販売経路を所持しているため、事故車や廃車になるような状態のお車でも買取可能です。
もちろん他の中古車買取業者では断られてしまうことが多い修復歴車でも問題ございません。
ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

事故車買取に携わって20年以上の経験を持ち、損害車や故障車に関する知識が豊富。 幼少期からの車好きが高じて、中古車販売店や大手カー用品店、ガソリンスタンドなどに従事し、 車の知見も深い。その経験を活かし、お得な売却術や修理・乗り換え方法など車に関する幅広いコラムの監修をしている。