車が大破してしまったとき、多くの人が「修理すべきかそれとも廃車にするべきか」と迷います。
フレームが損傷した車は修理に高額な費用がかかり、たとえ直しても安全性や市場価値に不安が残ります。
こうした背景から、結果的に売却する方が現実的で有利になるケースが多いです。
本記事では以下4つのポイントをもとに大破した車は売却したほうがお得な理由をくわしく解説いたします。
- 大破とは何か
- 修理と売却のメリットとデメリット
- 車が大破した場合の保険への影響
- 大破した車を売却する場合の注意点
事故や災害などで車が大破してしまい修理するか、手放すか迷われている方は是非参考にしてください。
 小池 一敏
    小池 一敏
  事故車買取に携わって20年以上の経験を持ち、損害車や故障車に関する知識が豊富。 幼少期からの車好きが高じて、中古車販売店や大手カー用品店、ガソリンスタンドなどに従事し、 車の知見も深い。その経験を活かし、お得な売却術や修理・乗り換え方法など車に関する幅広いコラムの監修をしている。 ...続きを読む
車の大破の定義とは
車の大破とは、警察庁が定める車の損傷の程度を表す区分の1つで、一般的に「車両としての機能が失われ、再生が困難と判断される車」のことを言います。(参考:警察庁|車両の損壊程度)
損傷の程度は「小破・中破・大破」の3つに区分され、以下のような違いがあります。
| 区分 | 特徴 | 修理箇所 | 
| 大破 | 車両の機能を喪失し再生不能と判断される損傷 | フレームや足回りなど広範囲 | 
|---|---|---|
| 中破 | エンジン修理や広範囲にわたる板金修理が必要な損傷 | エンジンやラジエーター、ドア又はフェンダーなど | 
| 小破 | 軽度の擦過傷やへこみによる板金修理が必要な損傷 | バックミラーや前照灯、車体の一部など | 
大破と判定された車は再生が困難であるため修理をしても再び乗れるとは限りません。
もし、歪んだフレームを戻したとしても「修復歴」がつくので、中古車としての市場価値が大きく下がります。
さらに、フレーム損傷は将来的な安全性や走行性能にも影響を残す可能性があるため、安心して長期間乗り続けることは難しいとされています。
修復歴については下記の記事でくわしく解説しています。合わせてご確認ください。

なお、台風や洪水でエンジンや電装系が浸水した水没車や、火災により走行機能を失った車両も実務上は大破と同等に扱われるケースがあります。
これらの違いを理解しておくことで、事故や災害後の対応をより正確に判断できるようになります。
大破した車は修理と売却のどちらを選ぶべきか
事故や災害で大破した車は、経済的な面で考えると売却の方が損を少なく抑えられます。
修理よりも売却がお得といえる理由は以下の2つです。
- 大破した車は修理費用が車両保険の補償限度額を超えて自己負担になるケースが多い
- 大破した車は修理したとしても同じ年式の同車種の半分程度まで市場価値が下がる
ただし、年式や走行距離が少ない車や愛着のある車の場合は、修理をして乗り続けたいと思われる方もいらっしゃいますよね。
そこで、この章では修理と売却それぞれの具体的なメリット・デメリット、そして保険との関係について詳しく解説していきます。
修理を選ぶメリットデメリット
大破した車を修理するかどうかは「利便性・費用面・安全性・資産価値」の4軸で考えると判断しやすくなります。
| 選択理由 | メリット | デメリット | 
| 利便性 | 乗り慣れた操作感を維持できる | 修理に長期間かかり代車費用も発生 | 
|---|---|---|
| 費用面 | 新車購入費用を一時的に回避できる | 修理費用の自己負担額が大きい | 
| 安全性 | なし | 事故時の衝撃吸収力が低下 | 
| 資産価値 | なし | 中古車査定での価値が20~50%減少 | 
車が大破した場合、骨格部分やエンジン、足回りなど走行に直結する部品の交換・修正が必要になり、部品の入荷待ちや追加整備で工期が延びやすい傾向があります。
さらに、各種センサーの交換や調整、骨格の修正など精密作業が多く、メーカーが定める手順で正確に修理しなければ車の性能が大きく低下して、安全性が脅かされます。
また、大破した車は修理をして走行可能な状態になったとしても、中古車市場では修復歴車として扱われるため、同じ年式の車と比べて資産価値が半減する可能性があります。
以上のことから修理に出すか迷った場合は、年式・走行距離・ローン残債・使用頻度などを整理し、「今後どれくらい安心して乗り続けたいか」と「将来の資産価値」を天秤にかけて判断しましょう。
リスクを理解したうえで修理にだす場合は、骨格修理の実績が豊富で評判のよい工場に相見積もりを取り、見積書・作業記録・整備保証を必ず手元に残しておくと安心です。
売却を選ぶメリットデメリット
大破した車を売却する選択は、修理費の負担を抑えて手軽に乗り換えたい人に向いています。
車の損傷の程度や市場の需要によって販売経路が変わるため、想定以上の金額になるケースもあります
以下は大破した車を売却する場合のメリットとデメリットです。
| 選択理由 | メリット | デメリット | 
|---|---|---|
| 経済面 | 修理費がかからず買取金を受け取れる可能性あり | 修復歴がつくため高価買取は期待できない次の車の購入資金を早く用意する必要がある | 
| 手続き面 | 業者が無料で代行してくれる | 売却先は慎重に選ばなければ損する可能性がある | 
こうした特徴を踏まえると、売却は経済面で合理的な選択といえます。
とくに大破した車の買取が可能な専門の業者を選べば、引き取りや書類手続きまで無料で対応してくれるため、追加費用をかけずに処分できます。
一方で、愛着のある車やまだ走行距離が少ない車を手放すのは惜しいと思う気持ちも少なからずあることでしょう。
しかし、大破車は修理しても安全性や耐久性に不安が残る可能性があるため、自分の生活や今後のカーライフを見据えて判断することが大切です。
車の大破と保険の関係
大破した車の修理や処分を考えるうえで、保険を使用するかどうかの判断は非常に重要です。
受けられる主な補償の種類は次のとおりです。
| 補償 | 内容 | 注意点 | 
| 車両保険 | 補償額は時価が上限 | 修理費が時価を超えると差額は自己負担 | 
|---|---|---|
| 全損修理特約 | 時価を超える修理費も補償される場合あり | 特約に加入していなければ適用不可 | 
| 評価損 | もらい事故なら修理後の価値下落分を請求できる | 相手の保険会社に請求が必要 | 
車両保険の補償額は車の時価額(事故直前の市場価値)が上限で、修理費がそれを超えると「経済的全損」として扱われ、修理費の不足分は自己負担になります。
ただし、「車両全損時復旧費特約」(保険会社により名称異なる)に加入していれば、条件次第で時価を超える修理費を補償してもらえることもあります。
主な保険会社の全損修理特約の例は以下のとおりです。
| 保険会社 | 特約名 | 条件 | 支払限度額 | 
| 東京海上日動 | 車両全損時復旧費特約 | 全損のため修理できない場合または修理費が車両保険金額以上となる場合 | 復旧費用限度額*1 | 
|---|---|---|---|
| 三井住友海上 | 車両全損時復旧費用特約 | 事故で全損になり車両保険で保険金を受け取る場合 | 復旧費用限度額*¹を保証 | 
| 損保ジャパン | 車両全損時復旧費用特約 | 全損車両の修理費用または新しい車の購入金額が車両保険金額を上回る場合 | 復旧費用限度額*¹の20%か20万円の高い方(再取得の場合) | 
| おとなの自動車保険 | 車両全損修理時特約 | 車の修理費用が、車両保険金額を超える場合 | 車両保険金額に上限50万円上乗せ | 
| あいおいニッセイ同和損保 | 車両全損時復旧費用特約 | 全損のため修理できない場合または修理費が「協定保険価額」以上となる場合 | 復旧費用限度額*¹を保証 | 
| 楽天損保 | 車両全損時臨時費用補償特約 | 車両保険を支払う事故において全損となった場合 | 車両保険金額の10%に相当する金額(1事故につき20万円限度) | 
| ソニー損保 | 車両全損時復旧費用特約 | 全損のため修理できない場合または修理費が車両保険金額以上となる場合 | 復旧費用限度額*¹を補償 | 
*¹車両保険金額の2倍または車両保険金額に100万円を加えた額のいずれか低い額
このように、加入している保険会社や特約の内容によって、自己負担の有無や補償金額が大きく変わります。
修理と売却のどちらを選ぶにしても、まずは自分の契約内容を確認し、補償範囲を正しく理解しておくことが大切です。
大破した車を売却する場合に知っておくべきこと
大破した車を売却するときは、単に査定を受けて金額を決めるだけでは十分とはいえません。
法律で定められた手続きや、信頼できる業者を見極めることが欠かせないからです。
とくに自動車リサイクル法に基づいた廃車処理の流れや、買取業者を選ぶ際の基準を理解しておくと、後から追加費用を請求されたり、トラブルに巻き込まれるリスクを避けられます。
この章では、売却前に必ず押さえておきたい下記の2つのポイントをご紹介します。
この2つのポイントを理解しておくことで、余計な出費やトラブルを防ぎつつ、納得して車を手放せます。
では、具体的に確認していきましょう。
自動車リサイクル法に沿った手続きと必要書類
大破した車を売却するときには「自動車リサイクル法」に沿った正しい手続きが求められます。
車は、2〜3万点の部品で構成されており、そのうち約75%が鉄、次いでアルミや樹脂、ゴムなどが占めます。
そのため、事故などで走れなくなった車でも多くの部品や素材に価値が残っており、適切に処理すれば再び資源として活かせます。
再利用される主な部品や素材は以下のとおりです。
| 再利用方法 | 例 | 
| リサイクル部品として再利用 | バンパー、エンジン、バッテリーなど | 
| 原料や燃料として再資源化 | 鉄、非鉄金属など | 
こうした資源を適切に再利用するために、日本では「電子マニフェスト」というIT管理システムが導入されています。
これにより、廃車が引取から解体・破砕に至るまでの流れを一台ずつ追跡でき、適正処理が行われているかを確認可能です。
廃車手続きが完了した車は、自治体に登録された引取業者や解体業者を通じて次のように処理されます。

なお再資源化できず、地球温暖化につながるフロンガスやエアバッグ、シュレッダーダストの処理にかかる費用には、車の持ち主が購入時に負担するリサイクル料金があてがわれます。
リサイクル料金の支払い時に渡される「リサイクル券」は、最終的な所有者まで引き継がれるため、売却時に提出が必要です。
リサイクル券の詳しい活用方法については、関連記事で解説していますのであわせてご覧ください。

また、大破した車を廃車にする場合は、以下の書類を準備して手続きを行う必要があります。
| 手続き内容 | 提出先 | 必要書類 | 
| 引取・解体依頼 | 自治体の登録業者 | 車検証・身分証明書・委任状(代理依頼時) | 
| 廃車(抹消登録)申請 | 管轄の運輸支局 | 車検証・リサイクル券・印鑑・ナンバープレート・OCR申請書・手数料納付書 | 
| 税金還付手続き | 各自治体 | 還付申請書・印鑑・口座情報 | 
廃車手続きの手順としては以下のとおりです。
- 解体業者に車を引き渡し、解体報告番号と解体記録日を取得する
- 運輸支局で抹消登録手続きを行い、抹消登録証明書を受け取る
- 該当者は自動車税・重量税の還付申請を行う
なお、廃車買取業者などで売却する場合は、書類作成や手続き代行を無料で行ってくれるケースも多くあります。
ここでは自動車リサイクル法の仕組みと廃車手続きについて解説いたしました。
続いては、実際にどのような業者に依頼すれば納得いく形で売却できるのかを確認していきましょう。
買取業者の選択基準
大破した車を少しでも高く売却するには、業者選びが非常に重要です。
何故なら、損傷のある車は状態によって評価が分かれるうえに、どこに依頼するかで査定額や売却手続きの手間が変わるからです。
大破した車の売却先に迷われている方は、下記の表を参考にしてください。
| 業者の種類 | 特徴 | メリット | デメリット | 
| ディーラー | 新車購入に合わせて下取りが可能 | 乗り換え手続きが一括で済む | 大破した車は引き取りが難しい | 
|---|---|---|---|
| 中古車買取業者 | 中古車の売買が可能 | 店舗数が多く来店しやすい | 大破した車は殆ど査定額がつかない | 
| 事故車・廃車買取業者 | 損傷のある車でも買取が可能 | 全国からオンラインでの依頼が可能 | 業者ごとの査定差が大きい | 
| 解体業者 | 部品単位で買取が可能 | 中間マージンを挟まない | 再資源としての価値しかつかない | 
事故車・廃車買取業者以外の業者では、大破した車を再販するルートが限られてしまうため、売却しても殆ど値段がつかないことが多いです。
ただし、業者によって査定基準やサービス内容に差があるため、複数社に依頼して比較することが大切です。
その際、引取費用や廃車手続き代行費用が無料かどうかも必ず確認しましょう。
業者選びや廃車に関してはこちらの記事を参考にしてください。


まとめ
車の大破はフレーム損傷や走行機能の喪失を伴う深刻な状態であり、修理には高額な費用とリスクがつきまといます。
そのため多くのケースでは売却が合理的な選択となりますが、愛着や利用状況によって修理を選ぶ人もいます。
最終的には保険の補償範囲や将来のカーライフを踏まえて判断することが大切です。
要点を整理すると次のとおりです。
- 車の大破はフレーム損傷や走行機能の喪失が基準となり、修理にはリスクが伴う
- 経済的に売却の方が有利だが、愛着や年式によっては修理を選ぶケースもある
- 保険の補償範囲や評価損の請求可否を確認することが重要
- 売却を選ぶ場合は自動車リサイクル法と業者選びの基準を理解
迷ったときは専門業者に無料査定を依頼し、まずは自分の車の価値を正しく把握することから始めましょう。
事故車買取のタウでは世界120カ国以上に販路を所持しており、大破した車でも車の状態や市場価値次第では想定以上の買取金額がつく可能性があります。
もしお手元の車を手放そうと考えている場合は、お電話またはWEBフォームからお気軽にご相談ください。
 小池 一敏
    小池 一敏
  事故車買取に携わって20年以上の経験を持ち、損害車や故障車に関する知識が豊富。 幼少期からの車好きが高じて、中古車販売店や大手カー用品店、ガソリンスタンドなどに従事し、 車の知見も深い。その経験を活かし、お得な売却術や修理・乗り換え方法など車に関する幅広いコラムの監修をしている。
 
             
			 
					 
								
 
         
     
			 
			 
			 
			 
			 
			