夜道や高速道路で車と鹿が衝突してしまったとき、
「鹿と衝突した場合は警察には通報すべき?」
「どんな手順で対応すればいいの?」
「車のへこみに保険は使える?」
といった疑問や不安がよぎるのではないでしょうか?
結論として、鹿との衝突自体は刑事罰の対象ではありません。
ただし、警察への報告を怠ると道路交通法第72条の報告義務違反にあたり、5万円以下の罰金が科される可能性があります。
つまり、「鹿との衝突事故そのものは罪ではないが、報告しないことは違法行為」となります。
車と鹿の事故を正しく報告し、冷静に手続きを進めることで、経済的・法的なトラブルを防ぎ、修理費の負担も最小限に抑えることができます。
この記事では「鹿と衝突したらどうすればいいのか?」という疑問を、事故直後の対応・保険の補償内容・修理判断・再発防止策の4つの観点から詳しく解説します。
▼この記事でわかること
- 各種保険でどのような補償が受けられるのか
- 修理費や保険料の関係を踏まえた現実的な判断方法
- 夜間や郊外での事故を防ぐための運転のポイント
この記事を読むことで、車が鹿と衝突した時に時に迷わず行動でき、補償・修理・安全対策の判断をスムーズに行えるようになります。
小池 一敏
事故車買取に携わって20年以上の経験を持ち、損害車や故障車に関する知識が豊富。 幼少期からの車好きが高じて、中古車販売店や大手カー用品店、ガソリンスタンドなどに従事し、 車の知見も深い。その経験を活かし、お得な売却術や修理・乗り換え方法など車に関する幅広いコラムの監修をしている。 ...続きを読む
鹿との衝突は罪ではないが警察への報告は義務
鹿との衝突は「物損事故」扱いで、過失の有無に関わらず刑事罰の対象ではありません。
しかし、道路交通法第72条(報告義務違反)に基づき、警察への事故の報告を怠ると5万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
さらに、警察に通報しなければ「交通事故証明書」が発行されず、保険金請求ができなくなるリスクもあります。
この証明書は保険の支払い・修理見積もり・示談のいずれでも必須となる書類です。
また、夜間や郊外では、放置されたへの鹿が原因で後続車の二次事故が発生する事例も少なくありません。
警察への通報を怠ると、
- 自分の保険金請求が拒否される
- 事故証明書がなく、修理・買い替えで損をする
- 鹿の遺体が放置され、後続車の事故を誘発する危険が高まる
という三重のリスクを負うことになります。
鹿との衝突事故発生時は「110番に通報」「自己判断で動かさない」「警察の指示に従う」の3点を徹底してください。
次章では、実際に鹿と衝突したときの対応手順を詳しく解説します。
鹿と衝突した時に行うべき対応と手続きの流れ
鹿との衝突直後は、冷静な判断と素早い行動が命を守ります。
特に、夜間や山間部では視界が悪く、後続車が事故に気づかずに二次事故を起こす危険が高まります。
車と鹿が衝突した時に、行うべき主な手続きの流れは下記です。
- 周囲の安全を確保
- 鹿の状態を確認
- 警察に通報
- 保険会社に連絡
それぞれ詳しく説明します。
周囲の安全を確保
事故直後は二次被害のリスクが最も高くなります
まずハザードランプを点灯し、可能であれば路肩や安全帯へ車を寄せましょう。
高速道路では車内にとどまらず、ガードレールの外側へ避難することが基本です。
▼安全確保のポイント
- ハザード・発煙筒・三角表示板で後続車へ警告
- 夜間はライトや懐中電灯で存在を示す
- 高速道路では車外退避が原則
停車したら、まずハザードランプを点灯して後続車に異常を知らせます。
その後、発煙筒を風下側に設置し、三角表示板を夜間なら50m以上後方に置くことで、接近してくる車に事故発生を明確に伝えられます。
設置作業中は走行車線を横断せず、ガードレールの外など安全な場所から行いましょう。
鹿の状態を確認
安全が確保できたら鹿の状態を確認して、道路緊急ダイヤル「#9910」に通報し対応を依頼しましょう。
その間は、決して鹿に触れないことが重要です。
鹿が興奮して暴れる恐れがあるほか、死亡している場合でも感染症など衛生面のリスクがあります。
通報すれば、道路管理者が速やかに除去・処理を行い、二次事故の防止にもつながります。
車と鹿が接触した際は、触らず、動かさずに通報することを覚えておきましょう。
警察に通報
道路緊急ダイヤル(#9910)に通報した後、もしくは鹿がいなくなった場合、次に警察に通報をしましょう。
鹿との衝突は物損事故として扱われ、物損事故が発生した場合、警察に報告する義務があります。
通報を怠ると、道路交通法違反により3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科される可能性があります。
通報した後は、警察が現場確認を行い、後日「交通事故証明書」が発行されます。
この「交通事故証明書」がないと、たとえ車両保険で車の修理をしたくても保険金請求ができない可能性が高くなります。
そのため必ず警察に通報しましょう。
保険会社に連絡
警察への通報後は、できるだけ早く保険会社にも報告しましょう。
修理・レッカー・代車の手配がスムーズに進み、補償の可否も早期に確認できます。
連絡が遅れると、保険の支払いが遅れたり補償が受けられなくなるケースもあるため注意が必要です。
ドライブレコーダーを車両につけている場合は事故映像を保存し、修理見積書や事故証明書とあわせて提出できるようにしておきましょう。
鹿との衝突は保険の対象|ケース別の補償内容と注意点
鹿との衝突事故でも、加入している保険によっては修理費や治療費などが補償されます。
ただし、どの保険から補償が受けられるかは加入している保険の種類や契約内容によって異なります。
この章では、車と鹿が衝突した時に対象になる保険を3つ紹介します。
- 車両保険:車の修理費を補償
- 傷害保険:運転者・同乗者のけがを補償
- 自損・搭乗者傷害保険:重大事故時の人的補償
それぞれの補償範囲を詳しく説明します。
【車両保険】車の修理費を補償
鹿との衝突は、一般型の車両保険に加入していれば修理費の補償が受けられます。
一方で、エコノミー型(限定補償)では動物との衝突が対象外になるケースが多く、契約内容の確認が不可欠です。
鹿との衝突では、車の前方が大きく損傷することが多く、バンパーやボンネットなどの交換が必要になることもあります。
以下は代表的な損傷部位とその修理費の目安です。
| 損傷部位 | 主な損傷内容 | 修理費用の目安 |
| フロントバンパー | 変形・塗装剥離 | 1〜10万円程度 |
|---|---|---|
| ボンネット | へこみ・歪み | 5〜15万円程度 |
| ヘッドライト | 割れ・光軸ズレ | 1〜10万円程度 |
| 内部パーツ(ラジエーター等) | 冷却系・センサー破損 | 5〜10万円程度 |
修理費が車の時価額(事故前の市場価値)を上回る場合、保険会社は「全損」と判断し、車の時価額を上限として保険金が支払われます。
ただし、鹿との衝突で修理費用が時価額を上回るケースはあまり多くはありません。
そのため、実際には「全損かどうか」よりも保険を使うか、自費で修理するかの判断が重要になります。
修理費用の大きさや免責金額、保険料の増加金額などを比較し、トータルでどちらが得かを見極めましょう。
修理に保険を使用するかどうかの判断は、【保険を使う前に確認すべき修理費とリスク】で詳しく解説します。
【傷害保険】運転者・同乗者のけがを補償
鹿との衝突で発生しやすいけがであるむち打ち・打撲などは、人身傷害保険や傷害保険で補償を受けられます。
主な補償対象は次の通りです。
- 入院・通院費
- 治療費
- 後遺障害・慰謝料
鹿との衝突事故では、当初は痛みが軽くても数日後に症状が出るケースが多く見られます。
そのため、事故直後に自覚症状がなくても必ず病院で受診し、診断書を取得しておくことが重要です。
この診断書を警察に提出すると、事故が物損事故から「人身事故扱い」となり、治療費や通院費も正式に補償対象となります。
また、保険会社へ連絡する際には、受診日・診断内容・通院回数などを明確に伝えると、支払い手続きがスムーズに進みます。
【自損・搭乗者傷害保険】重大事故時の人的補償
鹿との衝突で車が大破したり、運転者や同乗者が重傷を負う場合は、自損事故保険または搭乗者傷害保険が適用されます。
これらは相手がいない単独事故でも支払い対象となる保険で、死亡・後遺障害・入院費などの補償が中心です。
主な補償内容は以下の通りです。
- 治療費・入院費・通院費用
- 後遺障害に対する補償
- 死亡保険金(遺族への支払い)
鹿との事故が起きた際は軽いケガに見えても、内出血や脳震盪といった見えない損傷がある場合も多いため、必ず医療機関で精密検査を受けましょう。
傷害保険と同様に、診断書を警察に提出することで物損事故から「人身事故扱い」になり、治療費や通院費も正式に補償対象となります。
修理費用が高額で事故車の売却を検討しているなら、一度事故車売却シミュレーションで売却した場合の金額を確認してみましょう。
個人情報不要・わずか20秒で査定額の目安がわかります。
保険を使う前に確認すべき修理費とリスク
鹿との衝突で車が損傷したとき、車両保険を使えば一時的に自己負担を軽減できます。
しかし、保険を使えば「保険等級のダウン」により翌年以降の保険料が上がり、結果的に損をすることもあります。
そのため、修理費の額と将来的な保険料負担を比べ、「保険を今使うべきか」を冷静に判断することが重要です。
ここでは、保険を使うかどうかの判断の基準となる3つのポイントを紹介します。
- 等級ダウンと保険料の上昇を理解する
- 修理費用と免責金額を比較して判断する
- 修理よりも買い替えが特になる「全損」基準
等級ダウンと保険料の上昇を理解する

鹿との衝突で車両保険を使用すると、通常は3等級ダウンし、翌年から3年間は「事故あり等級」が適用されます。
この期間は保険料が高くなるうえ、無事故でも毎年1等級ずつしか上がらないため、元の等級に戻るまでには最低3年かかります。
たとえば、15等級の人が事故で12等級に下がった場合、3年間「事故あり等級」が続いたあと、ようやく無事故時の等級に戻ります。
しかしその間、もし事故を起こさなければ 18等級 まで上がっていたはずなので、実際には6等級分損をすることになります。
そのため、10万円前後の修理を保険でまかなっても、長期的な保険料アップを考えると赤字になるケースが少なくありません。
軽微な損傷であれば、自費修理のほうが結果的に安く済むことが多く、短期的な出費よりも長期的な総コストで判断することが重要です。
修理費用と免責金額を比較して判断する

保険には、ドライバーが負担する「免責金額」が設定されています。
たとえば免責が5万円で修理費用が10万円なら、保険会社から支払われるのは差額の5万円で、残りの5万円は自己負担になります。
修理費用が免責額を少し上回る程度であれば、保険を使うより自費修理の方が得になるケースが多いです。
一方で、損傷が大きく修理費が高額になる場合は、保険を使う方が合理的です。
免責金額は契約内容によって異なり、「1回目は0円、2回目以降5万円」などの条件が設けられている場合もあります。
保険を使うかどうかの判断をする際は、
- 修理費の総額
- 免責金額
- 保険料の上昇見込み
を比較し、トータルでどちらが安いかを基準に考えると良いでしょう。
修理よりも買い替えが得になる「全損」基準
修理費が車の時価額(事故前の市場価値)を上回ると、保険会社はその車を「全損」と判断します。
その場合、修理費の全額ではなく、時価額を上限とした保険金が支払われます。
このため、「修理費用がすべて出る」と誤解しないよう注意が必要です。
全損と判断された車は、修理しても資産価値が戻りにくいため、買い替えを検討する方が結果的に得になるケースが多いです。
そのため修理費用が高額で、車の修理や買い替えに悩む場合は、事故車の買取査定を受けてみるのも一つの選択肢です。
当社「事故車買取のタウ」では、全国対応・無料査定で、事故車でも買取が可能です。
鹿との衝突を避ける運転方法と再発防止のポイント
鹿との衝突事故は、ドライバーがどれだけ注意していても完全に防ぐことはできません。
しかし、事故が起きやすい時間帯や環境、鹿の行動特性を理解しておくことでリスクを大きく減らすことは可能です。
とくに秋から冬にかけては鹿の活動が活発になり、夕暮れから夜間にかけての走行では注意が必要です。
この章では、運転中に意識すべきポイントと、万が一の衝突を防ぐための具体的な運転方法を紹介します。
- 鹿を避けるときは減速と直進で衝突を最小限に
- 「動物注意」標識区間では減速・警戒を徹底
- 夜間・山間部では廃ビームと減速で早期発見を
鹿を避けるときは減速と直進で衝突を最小限に
鹿が飛び出してきたときは、ハンドルを切らずに減速・直進するのが最も安全です。
反射的にハンドルを切ると、車が横転したり、対向車線にはみ出して正面衝突を招く危険があります。
一方、ブレーキで速度を落としながら直進すれば、衝撃を最小限に抑えられ、自分や同乗者の命を守ることができます。
鹿は群れで行動し、1頭が通過した直後に2頭目・3頭目が続くことも珍しくありません。
そのため、1頭を避けたあとも油断せず、周囲を警戒しましょう。
また、カーブやトンネルの出口など視界が狭い場所では、あらかじめ速度を落としておくことが重要です。
「動物注意」標識区間では減速・警戒を徹底
「動物注意」標識を見たら、その先は鹿の出没リスクが高い区間です。
黄色い鹿マークの標識は、過去に衝突事故や出没が多発した場所に設置されています。
「動物注意」の標識を見かけたら、制限速度より10km/h程度減速して走行し、道路脇や林、斜面の動きに注意を払いましょう。
- 標識が設置されている区間では、「いつでも飛び出す可能性がある」と意識する
- 草むらや斜面など、視界が遮られる場所は特に警戒する
- 鹿は複数頭で行動するため、1頭を避けたあとも油断しない
また、標識がある地点の多くは、自治体や国土交通省が「ロードキル(動物衝突事故)」対策を重点的に行っている区域です。
そのため「動物注意」の標識区間では早めの減速と慎重な運転を意識しましょう。
夜間・山間部ではハイビームと減速で早期発見を
夜間や山間部では、ライトの使い方と減速が鹿との衝突を防ぐ鍵になります。
対向車がいない状況ではハイビームを活用して視界を広げることが推奨されており、鹿の目の反射光によって早めの発見につながります。
ただし、対向車や前方車両がいる場合は、まぶしさを避けるためロービームへ切り替えることが大切です。
また、雨や霧などの悪天候では視界が悪化するため、速度を落とし「早めの減速」と「慎重なブレーキ操作」を心がけましょう。
鹿は急に立ち止まったり戻ったりと予測不能な動きをします。
そのため視界の悪い夜間や山間部ではライトの照射範囲を意識し、常に速度を抑えて走行しましょう。
車と鹿の衝突事故に関するよくある疑問
鹿との衝突事故は、初めて経験するドライバーがほとんどです。
そのため、実際に鹿との衝突事故が起きたときに、戸惑う方が多いのではないでしょうか。
この章では、車と鹿の衝突事故に関して特に多く寄せられる疑問をまとめました。
それぞれのケースで取るべき対応を知っておくことで、事故後の混乱を防ぎ、補償や安全確保をスムーズに進めることができます。
- 鹿が逃げた場合はどうすればいい?
- 保険金請求に必要な書類は?
- 衝突した鹿の処理はどうすればいい?
鹿が逃げた場合はどうすればいい?
鹿が逃げた場合でも、警察への通報は義務です。
警察に通報をしなければ「交通事故証明書」が発行されず、車両保険や傷害保険の保険金請求ができなくなるおそれがあります。
鹿が現場にいなくても、「動物と接触した」「逃走した」と伝えれば問題ありません。
現場確認後に警察が事故扱いとして処理するため、鹿が逃げたからといって報告を怠ることはやめましょう。
保険金請求に必要な書類は?
保険金の請求には、主に事故発生と損害を証明する以下の書類が必要です。
- 交通事故証明書:警察発行
- 修理見積書:整備工場発行
- 診断書:医療機関発行 ※人身事故扱い時のみ
これらをそろえることで、審査や支払いがスムーズに進みます。
特に交通事故証明書は、保険会社が事故の発生を確認するために必ず必要な書類です。
警察への通報を行い、証明書を取得しておきましょう。
衝突した鹿の処理はどうすればいい?
鹿が道路上に残っている場合は、自分で処理せず道路緊急ダイヤル「#9910」へ通報してください。
野生動物は病原菌やダニを媒介している可能性があり、素手で触れるのは衛生・安全の両面で非常に危険です。
また、誤って車道に出ると二次事故につながるおそれもあります。
まとめ
鹿との衝突事故は、どれだけ注意していても完全に避けられるものではありません。
まずは「安全確保 → 通報 → 報告」という3つのステップを冷静に実行しましょう。
この対応をすることで、二次事故の防止や保険の円滑な支払いにつながります。
また、鹿との衝突ではフロント部分の損傷が多く、修理費が高額になるケースも少なくありません。
一般型の車両保険であれば動物との衝突も補償対象になりますが、軽微な損傷であれば保険料上昇を避けるために自費修理を検討するのも選択肢です。
もし修理費が高額になり、車の買い替えを検討している場合は、「事故車買取のタウ」にご相談ください。
事故車買取に携わって20年以上の経験を持ち、損害車や故障車に関する知識が豊富。
幼少期からの車好きが高じて、中古車販売店や大手カー用品店、ガソリンスタンドなどに従事し、
車の知見も深い。その経験を活かし、お得な売却術や修理・乗り換え方法など車に関する幅広いコラムの監修をしている。
小池 一敏
