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物損から人身に変更された場合の罰則と3つのデメリットを解説

物損事故が人身に切り替わった場合に加害者に降りかかる3つの罰則とは

交通事故を物損として処理していたのに、後日になって被害者が「怪我をした」と訴え、結果として人身事故に切り替わるケースは珍しくありません。

しかも、人身事故への切り替えは、被害者が医師の診断書を提出し、警察がそれを受理した時点で自動的に進むため、加害者側の意思で止めることはできません。

人身事故に切り替わることで加害者が負う主なリスクは、以下の3つです。

本記事では、人身事故扱いとなった場合の罰則を中心に、起訴までの流れや加害者が取るべき行動のポイントまで、分かりやすく解説します。

小池 一敏

事故車買取に携わって20年以上の経験を持ち、損害車や故障車に関する知識が豊富。 幼少期からの車好きが高じて、中古車販売店や大手カー用品店、ガソリンスタンドなどに従事し、 車の知見も深い。その経験を活かし、お得な売却術や修理・乗り換え方法など車に関する幅広いコラムの監修をしている。 ...続きを読む

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目次

物損事故から人身事故に変更された場合の罰則と請求

物損事故として処理されていた交通事故が人身事故に切り替わると、加害者には次のような罰則や請求が発生します。

罰則(請求) 処分例
行政処分 違反点数の加算による免許停止
刑事処分 過失運転致死傷罪の適用による罰金刑
民事責任 慰謝料・治療費などの人的損害に対する賠償義務

たとえ軽い接触事故でも、相手が「首が痛い」と訴えて診断書を提出すれば、加害者は人身事故の当事者として行政処分・刑事処分・損害賠償の対象となります。

この章では、こうした状況で加害者にどのような責任が発生するのか、罰則の全体像と影響範囲を解説します。

人身事故への切り替えで発生する行政処分

人身事故として受理されると、加害者には違反点数が加算され、行政処分の対象となります。

違反点数が加算されない物損事故とは異なり、「急に責任が重くなった」と不安に感じる方も多いでしょう。

とくに、累積点数が6点以上になると免許停止のリスクが生じ、日常生活や仕事にも影響が出る可能性があります。

では、人身事故への切り替えによる点数加算の仕組みがどうなっているか、以下で確認しておきましょう。

  • 違反の種類に応じた基礎点数
  • 被害者の治療期間に応じた付加点数

例えば、信号無視で相手に全治15日未満のけがを負わせた場合には、次の点数が科されます。

2点(信号無視)+3点(付加点数)=合計5点

なお、免許停止期間を短縮できる講習制度もあるため、必要に応じて各都道府県の運転免許センターの案内ページを確認してください。

点数制度の詳細や免許停止の基準については、以下の記事でわかりやすく解説しています。

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人身事故への切り替えで発生する刑事処分

先ほど紹介した行政処分とは別で、人身事故として処理された時点で加害者は刑事事件の対象となります。

そのため、状況によっては法律上の処罰を受ける可能性があります。

刑事処分の有無や重さは、以下の要因に左右されます。

  • 被害者のけがの程度
  • 加害者の過失の内容
  • 示談の成立状況

とくに、事故の原因がわき見運転や漫然運転などの注意散漫による安全確認不足が原因の場合は、過失運転致死傷罪が適用される可能性があります。

たとえ軽微な怪我であっても、過失運転致死傷罪が適用されれば、多くの場合は略式起訴による罰金刑となるケースが一般的です。

罰金額の目安は、12〜50万円程度とされています。

ただし、被害者の処罰感情が強く示談が成立していない場合や、加害者に反省の態度が見られない場合は、初犯(前科なし)であっても罰金額が高くなる傾向にあります。

重い過失や被害者との示談が不成立の場合は、正式起訴されて公開の法廷で刑罰が判断されます。

刑事処分が科せられるまでの流れについては、「人身事故扱いになった後の起訴までの流れ」の章をご確認ください。

人身事故への切り替えで発生する民事責任

物損事故から人身事故へ切り替わると、賠償の対象が「物」から「ケガをした人」へ大きく広がります。

そのため、車の修理費のみで済んでいた事故でも、治療費や慰謝料などの人的損害が加わるため、加害者の負担額は一気に増えます。

まずは、物損事故と人身事故で異なる賠償項目を見てみましょう。

賠償項目 物損事故 人身事故
車両の修理費用
積載物の修理交換費用
代車費用
治療費用
通院交通費
慰謝料(3種類)
休業損害
看護・介護費用
逸失利益

人身事故では人への補償が多く追加されるため、賠償金が高額になりやすい点が大きな特徴です。

とくに慰謝料は、入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」の3種類があります。

下記3つの基準のどれが採用されるかで、賠償金額が大きく異なります。

慰謝料の算定基準は、自賠責基準、任意保険基準・弁護士基準の3つです。

強制保険である自賠責保険の基準が採用される場合4,300円×(通院日数または実治療期間×2の少額の方)で算出されます。

基本的に1ヵ月の実治療期間が15日未満の場合は治療日数×2を採用します。

自賠責保険の対人賠償上限は120万円までなので、入通院期間が長く上限を超えた金額分は、加害者の自己負担になります。

加害者が任意保険に加入している場合は、保険会社が示談交渉を請け負うので、任意保険基準が採用されます。

任意保険基準で1ヵ月入通院した場合の相場は、8万6千円〜12万円程度とされますが、各社で異なり、自賠責基準と大きく変わらない金額になる場合もあります。

これらの基準で提示された慰謝料に被害者が納得できず弁護士に依頼した場合は、弁護士基準が適用される可能性があります。

3つの算定基準の中で、弁護士基準が最も高額になる傾向があり、示談交渉で採用されると賠償額が跳ね上がります。

たとえば、被害者が1ヶ月の通院(実治療期間5日)を必要とするむち打ちを訴えた場合、自賠責基準に比べて弁護士基準は2〜4倍以上の慰謝料となるケースがあります。

自賠責基準:4,300円×5日×2=約4万3千円

弁護士基準:相場約19万円

また、人身事故で任意保険を利用すると等級が下がり、翌年以降の保険料が上がる点にも注意が必要です。

保険料の増額は数年間続くため、経済的影響は小さくありません。

示談を適切に進めるためにも、早い段階で弁護士に相談しておくと安心です。

人身事故扱いになった後の起訴までの流れ

人身事故として扱われると、加害者は刑事事件の被疑者となり、警察や検察による正式な手続きを受けることになります。

実況見分や取り調べの対応次第では、不起訴となるはずの事故でも前科がつく結果になる可能性があります。

人身事故として扱われた後の一連の流れを把握し、どの段階で何に注意すべきかを理解しておくことが、将来的な不利益を避けるために大切です。

一般的な手続きの流れは以下のとおりです。

手続きの段階 内容概要
1. 実況見分・供述調書の作成 警察が現場検証や加害者・被害者の供述をもとに、事故状況と過失内容を記録
2. 書類送検 警察が供述調書を検察へ送致
3. 検察による呼出・取調べ 検察官が加害者を呼び出して取調べを行い法的観点に基づいた調書を再度作成
4. 処分決定 不起訴・罰金刑・懲役刑などを決定

物損事故から人身事故に変更すると、警察はまず事故現場で実況見分を行い、車両の位置やブレーキ痕、現場の道路状況など事故の状況を写真や図面で詳細に記録します。

そのうえで、加害者・被害者から聴取した証言をもとに供述調書を作成し、検察へ書類送検します。

書類送検は逮捕を伴わない一般的な処理方法で、事故の大半はこの形式で進みます。

送検後は、数週間〜数か月後に検察庁から出頭通知が届き、指定日時に取調べを受けることになります。

出頭は任意ですが、正当な理由なく応じないと逃亡や罪証隠滅のおそれがあると判断され、逮捕や起訴の可能性があります。

なお、日程の都合が悪い場合は事前に連絡すれば変更できます。

聴収後は、検察官が事故の重大性や加害者の態度、示談の成立状況などを総合的に判断して、次のような処分を下します。

  • 不起訴:刑事裁判にかけない処分
  • 略式起訴:裁判所を経ずに罰金刑を科す簡易な手続き
  • 正式起訴:正式裁判に進み、懲役刑などが科される可能性がある

たとえば、軽度なけがで示談が成立していたケースでは、略式手続きにより20万円程度の罰金で終結した例も報告されています。(出典:アトム法律事務所

一方で、被害が重度で示談が成立していない場合や過失が重大なケースでは、正式裁判に発展することもあります。

法務省の『令和5年 犯罪白書』によると、過失運転致死傷罪に該当する交通事故では不起訴率が84.2%と非常に高く、被害が軽微であったり、示談が成立しているケースでは不起訴となる傾向があります。

一方危険運転致死傷罪に該当するケースでは、不起訴率は24.5%に下がり、65%が正式裁判へ進んでいます。

なお、略式でも正式でも起訴されると前科がつくことを覚えておきましょう。

最終処分決定には、加害者の反省度合いや聴収時の対応も評価に影響するため、誠実な対応を心がけるようにすることが大切です。

特に初犯で反省の態度を示している場合、不起訴または罰金刑で済む可能性が高まります。

人身に変更された場合に加害者がとるべき行動と対策

物損事故から人身事故に切り替わった場合、加害者が取るべき行動は以下のとおりです。

  • 被害者の負傷の程度を確認
  • 保険会社に人身事故への切り替わりを連絡
  • 示談交渉の準備

まずは被害者のけがを気遣いながら、示談・刑事処分完了まで誠実な姿勢で対応しましょう。

適切な対応を怠ると、刑事処分が重くなったり、賠償金額が増額するなど不利になる可能性があります。

ただし、過度な謝罪は過失を認めた証拠と捉えられる可能性もあるため、「ご迷惑をおかけしました」といった配慮ある言い回しを心がけましょう。

また、人身事故扱いになると補償範囲が広がるため、事故直後に連絡していた場合でも、保険会社には改めて状況を説明する必要があります。

なお、示談交渉に不安がある場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談することで、適切な賠償額の判断や交渉手続きがスムーズになります。

日弁連交通事故相談センターや自治体の相談窓口など、無料で利用できる機関もあります。

よくある質問

人身事故へ切り替わった場合の罰則や流れ、対応について解説してきましたが、「そもそも物損と人身の違いがわからない」「なぜ後から切り替わるのか」と疑問を抱く方も多いでしょう。

ここでは、実際に多く寄せられる3つの代表的な質問について、わかりやすくお答えしていきます。

人身事故と物損事故の違いは何ですか?

最も大きな違いは、「人がけがをしたかどうか」です。

物損事故は車や建物、所持品など物だけが壊れた事故のことをいいます。

一方、たとえ軽傷でも「人体に被害が出た」場合は人身事故として扱われます。

人身事故は刑事事件に該当するので、物損事故に比べて賠償範囲や罰則の重さが大きく変わります。

物損事故から人身事故に切り替わるのはどのようなケースですか?

事故後に怪我が発覚した場合や、事故直後は痛みがなく後から症状が出たケースです。

事故直後はアドレナリンの分泌により痛覚が麻痺するため怪我に気がつきにくく、数時間から数日後にむち打ちや手足のしびれなどをうったえる場合があります。

物損事故として処理していても、医療機関を受診して、医師が作成した診断書を警察に提出すれば切り替えが可能です。

物損事故から人身事故への切り替えを拒否できますか?

拒否できません。

警察は被害者から提出された医師の診断書を確認した上で、事故による負傷と判断すれば人身事故として扱います。

この判断に、加害者の意思が影響することはありません。

まとめ

物損事故が人身事故へ切り替わると、行政処分・刑事処分・民事責任の3つが加わり、加害者の負担は大きくなります。

人身事故への切り替えは被害者の診断書提出によって進むため、加害者側で拒否することはできません

以下に、人身事故扱いとなった場合に生じる罰則を整理します。

  • 行政処分で違反点数が加算され、免許停止・取消の可能性がある
  • 刑事処分として罰金刑や前科がつくリスクがある
  • 民事責任として高額な慰謝料・治療費などを請求される

こうした負担を最小限に抑えるには、事故後すぐに保険会社へ連絡し、実況見分や取調べに備えて当時の状況を整理しておくことが重要です。

示談交渉や刑事処分で不安がある場合は、交通事故に詳しい弁護士への相談も視野に入れて対策を進めましょう。

なお、事故車の処分方法でお困りの方は、事故車買取のタウにご相談ください。

タウは世界120ヶ国以上に販売経路を持ち、一般の販売店では減額されてしまう車でも買取可能なケースがあります。

事故後の手続きと併せて車の処分で悩んでいる方は、一度ご相談ください。

小池 一敏

事故車買取に携わって20年以上の経験を持ち、損害車や故障車に関する知識が豊富。 幼少期からの車好きが高じて、中古車販売店や大手カー用品店、ガソリンスタンドなどに従事し、 車の知見も深い。その経験を活かし、お得な売却術や修理・乗り換え方法など車に関する幅広いコラムの監修をしている。

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