交通事故の後処理でドライブレコーダーの事故映像を警察や保険会社に提出しても、「本当に証拠になるの?」と思いますよね。
結論から言うと、ドライブレコーダーの映像は過失割合の判断や示談交渉を有利に進められる材料になる可能性があります。
一方で、提出のタイミングや映像の取り扱いを誤ると、不利な結果を招く恐れもあります。
この記事では、ドライブレコーダーの映像を事故対応で活用する場合に知っておきたい以下の4つのポイントを紹介します。
ドライブレコーダーの映像を上手く活用できれば、事故時のトラブルや不当な過失割合を回避できる可能性が高まります。
交通事故を起こして事故対応にお困りの方は、ドライブレコーダーの活用方法を参考にしてください。
小池 一敏
事故車買取に携わって20年以上の経験を持ち、損害車や故障車に関する知識が豊富。 幼少期からの車好きが高じて、中古車販売店や大手カー用品店、ガソリンスタンドなどに従事し、 車の知見も深い。その経験を活かし、お得な売却術や修理・乗り換え方法など車に関する幅広いコラムの監修をしている。 ...続きを読む
ドライブレコーダー映像の事故対応での活用法
交通事故では、ドライブレコーダーの映像が過失判断や示談交渉を左右する客観的な証拠になります。
事故直後のドライバーは混乱しやすく、状況をうまく説明できないことも多いです。
そのため、ドライブレコーダーの映像が事実を示す唯一の根拠となるケースがあるのです。
国土交通省の『映像記録型ドライブレコーダーの搭載効果に関する調査報告書』では、「映像記録型ドライブレコーダーは事故原因の究明や再発防止に有効」と明言されており、実際の事故検証や安全教育の場での活用が進んでいます。
ドライブレコーダーの映像は事故対応時に以下のような活用が可能です。
| ドライブレコーダーの主な役割 | 具体的な内容 |
| 事故の事実を客観的に証明 | 信号、速度、進路、ブレーキ操作などを映像で再現 |
| 過失割合の判断材料 | 双方の主張が食い違う場合でも、事実関係を明確化 |
| 示談・保険対応の円滑化 | 事故の原因が明確になり、対応が迅速に進む |
ドライブレコーダーの強みは、事故の瞬間だけでなく直前・直後の動きまで映像で残せることです。
加速度センサー(Gセンサー)やGPSが搭載されたドライブレコーダーの場合、衝突時の速度、角度、停止位置などを客観的に確認できます。
このように、ドライブレコーダーの映像を正しく扱えば、警察や保険会社の聴取がスムーズになり、後のトラブルを防げます。
とくに過失割合の判断では、ドライブレコーダーの映像が「どちらに非があるか」を裏付ける重要な証拠になります。
ここからは、実際にドライブレコーダーの映像が過失割合の算定にどのように影響するのかを具体的に解説します。
ドライブレコーダーの映像が事故の過失割合に与える影響
ドライブレコーダーの映像は、交通事故の過失割合を判断するうえで信頼性の高い証拠とお伝えしました。
ここでは、映像が具体的にどのように役立つのかをくわしく見ていきましょう。
ドライブレコーダーは信号の色や速度、ブレーキのタイミングなど運転中の状況を正確に記録します。
そのため、当事者の記憶や感情に左右されず、実際に何が起きたかを客観的に示す「第三の証人」として機能します。
たとえば、双方が「信号は青だった」と主張しても、ドライブレコーダーに赤信号で交差点に進入した様子が記録されていれば、過失の有無は明確です。
過失割合の判断に関わる主な要素は次のとおりです。
| 判定要素 | 映像からわかる内容 |
| 交通ルールの遵守 | 赤信号侵入や一時停止無視などの交通違反の有無 |
|---|---|
| 接触角度と速度 | 衝突の方向や速度差から、追突・急な割り込みなどを特定 |
| 車線変更や進路妨害 | ウインカー操作や車間距離、進路変更の安全確認の状況 |
| 回避行動 | 衝突前に減速やハンドル操作などの回避行動をとったかどうか |
目撃情報が少ない事故や当事者の主張が食い違う事故では、映像の価値は高まります。
事故後のトラブルや不当な過失割合を避けたい方は、ドライブレコーダーの映像を保存して、必要に応じて法的に有効な形で提出すると良いでしょう。
裁判・示談で証拠として採用される条件と注意点
裁判や示談交渉の時もドライブレコーダーの映像は、客観的証拠として扱われます。
ただし、信頼性の高い証拠として扱われるためには、いくつかの条件を満たしている必要があります。
| 採用される主な条件 | 条件の詳細 |
| 撮影日時・場所の正確性 | 日付・時刻・位置情報が事故状況と一致しているか |
| 映像の確実さ | 映像の一部を削除・加工した形跡がないか |
| 映像のわかりやすさ | 信号の色や車両ナンバーなど現場の状況が判別可能か |
事故の瞬間をしっかり記録していても上記の条件を満たしていない場合、裁判所が「改ざんされたデータ」と判断し、証拠として認めないことがあります。
そのため、映像を警察や保険会社に提出するときは元の映像に触らずコピーを作成し、弁護士を通じてコピーした映像を提出するのが安全です。
また、提出した映像は原則として返却されないことが多いので、必ずバックアップを複数とっておくことをおすすめします。
データが手元に残っていないと、後日再確認が必要になった場合に不利な立場になる恐れがあります。
ドライブレコーダーの映像は、事故の真実を明らかにする非常に強力な証拠です。
しかし、取り扱い方を誤ると逆に「不利な証拠」として扱われてしまう可能性もあります。
提出するかどうか少しでも判断に迷う場合は、交通事故の処理にくわしい弁護士や専門家に相談し、最も適切な方法で活用するようにしましょう。
ドライブレコーダーの映像を警察や保険会社に提出する際の判断ポイント
ドライブレコーダーの映像を提出するかどうかは、ドライバー自身の判断に委ねられています。
ドライブレコーダーの映像を警察や保険会社に提出するか迷った場合は、次のメリットとデメリットを比較して判断しましょう。
| 判断軸 | メリット | リスク |
| 警察への提出 | 事故状況の特定が早まり実況見分が正確に進む | 自分の責任が重くなるような情報が映っている可能性もある |
| 保険会社への提出 | 過失割合や損害の状況を客観的に判断でき、示談交渉が早く進む | 自身の過失割合が増えて補償額が減る可能性がある |
ドライブレコーダーの映像は事実を明らかにする強力な証拠である一方で、提出の仕方や内容の見せ方によっては自分の過失が重くなる可能性も理解しておきましょう。
たとえば、軽いスピード超過や信号直前での急ブレーキなど、本人にとって些細な行動でも「安全運転義務を怠った」と判断される可能性があります。
逆に、「危険を回避しようとしていた」と判断できる運転操作が映っていれば、有利に評価されることもあります。
そのため、ドライブレコーダーの映像を提出する前に弁護士や保険会社の担当者に確認を取ると安心です。
とくに、過失割合をめぐる交渉中のタイミングや人身事故など重大な案件では、感情的な判断を避けて専門家のアドバイスを受けたうえで慎重に対応するようにしましょう。
ドライブレコーダーの映像を警察や保険会社に提出する手順
ドライブレコーダーの映像を提出するときは、データを安全に保存することと、提出範囲を適切に管理することが大切です。
慌てて操作すると映像が消えたり、データが破損したりする恐れがあるため慎重に対応しましょう。
ドライブレコーダーの映像を提出する場合の一連の流れは以下のとおりです。

なお、映像の取り扱いを誤ると証拠として無効になったり、他人の権利を侵害する恐れがあるため、以下の注意点にも目を通しておきましょう。
| 注意項目 | 内容 |
| 映像の範囲 | 個人情報や関係のない映像は提出しない |
| 画質・形式 | 再生できる一般的な動画形式(例:MP4)で提出する |
| 法的配慮 | 映像の内容に不安がある場合は、弁護士や保険担当者に確認したうえで提出する |
ここまで紹介したように、ドライブレコーダーの映像を正しく保管・提出することで、事故後の対応をスムーズに進めることができます。
事故後の対応の流れに関しては、下記の記事をご確認ください。

ただし、実際の現場では「映像が見つからない」「データが壊れて再生できない」といったトラブルが起きることもあります。
特にSDカードの不具合や上書き設定によって、肝心の事故映像が保存されていないケースは珍しくありません。
次の章では、映像が残っていなかった場合に慌てず対応できるよう、映像が消える原因と復元方法について解説します。
ドライブレコーダーの映像が残っていないときの対処法
事故後にドライブレコーダーの映像が残っていなくても、原因を確認すれば復元できる可能性があります。
ドライブレコーダーに映像が保存されない原因は、以下のようなパターンが考えられます。
| 主な原因 | 内容 |
| 上書き設定 | SDカードのメモリ容量を上回ると古いデータが自動的に上書きされる |
| SDカードの破損 | 長期間使用や衝撃、熱などによりSDカードが損傷し、データが読み取れない |
| Gセンサーの感度不足 | 衝撃を正しく感知できず、事故映像が自動保存されなかった |
| 誤操作 | 録画停止や誤って初期化を行い、映像データを削除してしまった |
このように、ドライブレコーダーの保存設定やSDカードの状態が原因で映像が残らないケースがほとんどです。
SDカードは容量によって録画可能時間が異なり、一般的には32GBで約5時間前後が目安とされています。
もし映像が残っていない場合は、原因を特定してできるだけ早く復旧作業に取りかかりましょう。
時間が経過するほど新しいデータに上書きされるので、復元の成功率は下がります。
軽度なデータ消失であれば、復元ソフトを使って自力で映像を取り戻せる場合もあります。
ですが、SDカードが破損している場合やデータが完全に消えている場合は、専門の復旧業者に依頼する方が安全かつ確実です。
次の章では、状況に応じて選べる2つの復旧方法についてくわしく解説します。
自力で事故映像を復元する方法
SDカードがパソコンなどで正常に認識される場合は、まず自分でデータ復旧を試してみると良いでしょう。
最近は無料や低コストでデータを復旧できるソフトも多く普及しており、削除されたファイルの一部を取り戻せる可能性があります。
ただし、操作を誤ると復元が難しくなるリスクもあるため、手順に沿って慎重に進めてください。
【自力で復元する3ステップ】
- SDカードの使用をすぐにやめる
事故後は録画を停止し、すぐにSDカードを取り外して保管してください。
新しいデータが上書きされると、過去の映像が完全に消えてしまい、復元が不可能になります。 - 復元ソフトでスキャンを実施する
無料でも使える「Recoverit」や「EaseUS Data Recovery Wizard」などのソフトを使い、削除・上書きデータをスキャンします。
スキャンには数十分〜数時間かかることがありますが、途中で止めずに最後まで完了させることが重要です。 - 復元データを安全に保存・バックアップする
復元したファイルは、必ず別のドライブやクラウドに保存しましょう。
元のSDカードに上書きすると、再びデータが消える恐れがあります。
自力での復元は、費用を抑えながら短時間で結果を確認したい人に向いた方法です。
難しい操作は必要なく、基本的なパソコン操作ができれば誰でも試せます。
ただし、復旧できる確率や対応範囲はソフトによって異なるため、信頼性やサポート体制も確認して選ぶと安心です。
専門業者に事故映像の復元を依頼する方法と注意点
SDカードが物理的に損傷している場合や、自力での復元が難しい場合は、専門業者に相談しましょう。
専門業者では、専用の復旧機器を使ってSDカード内部のメモリチップから直接データを取り出すので、自力では復元できない映像でも取り戻せる可能性があります。
特に裁判や保険交渉で使用する重要な映像は、早めに専門家へ相談することで復旧率を高められる可能性があります。
業者に映像の復旧を依頼する場合は、「事故調査や保険対応で使用する映像の復元が目的である」ことを伝えるとスムーズです。
費用相場はおおよそ3万〜10万円前後です。
復旧した映像は、事故状況を客観的に再現する「動かぬ証拠」として大きな意味を持ちます。
過失割合や損害賠償の判断にも直結するため、復旧したデータは安全に保管し、警察や保険会社へ正しい形で提出しましょう。
なお、映像内にナンバープレートや歩行者などの個人情報が映っている場合は、必要最小限の範囲で共有するよう注意が必要です。
まとめ
ドライブレコーダーは、事故後のトラブル解決において信頼できる証拠です。
正しく保存・提出すれば、過失割合の判断や示談交渉を有利に進められます。
一方で、映像が残っていない場合のリスクもあるため、日頃のメンテナンスも欠かせません。
本記事での要点は以下のとおりです。
- ドライブレコーダーの映像は過失割合の判断や保険会社の対応に影響
- ドライブレコーダーの事故映像の提出は任意
- SDカードに保存した映像が消えた場合は、自力復元または専門業者へ依頼
- 定期的なバックアップとSDカードの点検でデータの破損を防止
最近ではAIによる危険運転検知や自動通報機能を搭載したドライブレコーダーが、事故防止の観点から注目されています。
あなたのカーライフに合わせてドライブレコーダーを見直すことも一つの選択でしょう。
なお、事故による被害が大きく車の修理が難しい場合は、事故車買取サービスの利用を検討してみましょう。
事故車買取のタウでは、世界120カ国以上に販路を所持しており、事故で損傷した車でも車両状態や市場価値次第では想定以上の買取金額がつく可能性があります。
もしお手元の車を手放そうと考えている場合は、お電話またはWEBフォームからお気軽にご相談ください。
小池 一敏
事故車買取に携わって20年以上の経験を持ち、損害車や故障車に関する知識が豊富。 幼少期からの車好きが高じて、中古車販売店や大手カー用品店、ガソリンスタンドなどに従事し、 車の知見も深い。その経験を活かし、お得な売却術や修理・乗り換え方法など車に関する幅広いコラムの監修をしている。
